経済・社会

2025.09.17 09:45

屈辱を味わった韓国人労働者 壊れたトランプ政権の正しいトリセツは

2025年9月12日:米国で拘束されていた韓国人労働者らが、仁川国際空港第2ターミナルからバスへ向かう様子(Photo by Hwawon Ceci Lee/Anadolu via Getty Images)

韓国側の関係者の一人は「元々、米政府はストーブパイプ(縦割り)が目立ち、関係省庁の連携の悪さが目立っていた。そこにもってきて、第2次トランプ政権は調整役とも言える国家安全保障会議(NSC)の削減に乗り出した」と指摘する。ラトニック米商務長官は11日、米ニュースサイト「アクシオス」のインタビューで、自身が国土安全保障省のノーム長官に電話をかけ、韓国人のビザ取得を支援する考えを示した。この関係者は「韓国側が散々ビザ制度の改善を求めていた事実を隠そうとする、たちの悪い発言だ」と語る。

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厳密に考えれば法令違反だが、過去の事例から考えて、韓国の人々は突然の摘発に驚き、慌てふためいた。何より、手錠と足かせをはめられ、顔をさらされながら拘禁施設に連行されていく労働者の映像は、韓国の人々に少なくないショックを与えた。韓国の国会議員経験者は「労働者が帰国できたのは良かった。ただ、同じような事件が続くと、韓国の対米感情はかなり悪化するだろう」と語る。

一方、今回の事件は韓国の李在明政権には追い風になりそうだという。李氏は8月28日、ワシントンでトランプ米大統領と首脳会談を行ったが、貿易・投資の事前協議が難航し、首脳共同声明やファクトシートなどの発表ができずに終わった。韓国では保守系を中心に、「何の成果も得られなかった会談」という批判が起きた。

ところが、首脳会談からわずか10日後に、ジョージア州で今回の事件が発生した。逆に李在明政権の支持勢力を中心に、「こんな横暴なトランプ政権に対し、安易に譲歩しなくてよかった」という声が出ている。さらに、李氏は11日の記者会見で「この状況に非常に困惑している」「それ(韓国人労働者の米国への派遣)が許されないのであれば、米国に製造拠点を設立するのは難しくなるばかりだ」と述べた。韓国人を守ろうとする李氏の姿勢は韓国内で支持されているようだ。

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トランプ氏は事件を受け、拘束された韓国人らが米国労働者の技術訓練を支援する案を模索する考えも示した。米国は拘束された人々がさらに米国にとどまる意向があるか、確かめようともした。だが、韓国側は「拘束されて心理的にも肉体的にもショックを受けている」として、即時帰国の道を選んだ。今後のトランプ政権の反応次第では、こうしたやり方が「トランプのトリセツ」の参考になるかもしれない。

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文=牧野愛博

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