地球最大の眼:記録された最大のものは直径約28cm
一般メディアでは、ダイオウホウズキイカの眼の大きさが時に誇張されるが、彼らが、地球上で知られる動物のうち、記録上最大の眼をもっていることは間違いない。
『Current Biology』で2012年4月に発表された報告の著者らは、次のように述べている。「ダイオウイカとダイオウホウズキイカが生息する外洋の深海環境には、大型脊椎動物も多く生息するが、そうした脊椎動物の眼のサイズは、これらのイカと比べると非常に小さい。この事実は、ダイオウイカとダイオウホウズキイカの眼の用途が、ほかの動物と共通するものではないことを強く示唆している」
これまでに捕獲された最大のダイオウホウズキイカは、2012年にニュージーランドで見つかった成体の標本で、眼の大きさは直径11インチ(約28cm)だった。このダイオウホウズキイカは、自然界最大の眼の記録保持者だが、この直径は、ダイオウイカであれ、ダイオウホウズキイカであれ、理論上の最大値に近い。
比較のために言うと、最大の眼をもつ魚はメカジキ(学名:Xiphias gladius)で、眼の直径は大きいもので9cm(3.5インチ)だ。メカジキの大きな眼は、深海の薄暗い環境のなかで狩りをするのに役立っている。
ダイオウホウズキイカの巨大な眼、「異なる用途」とは?
ダイオウホウズキイカの巨大な眼は主に、深海で大型の捕食者、特にマッコウクジラを感知するための適応だ。また、ほかの海生生物は、餌や交尾相手を見つけるために眼を利用しているが、ダイオウホウズキイカの巨大な眼はそれとは異なり、生物発光を感知できる特殊な調整になっている。大きな捕食者の動きに乱される、小さな生物の発するかすかな光を感知できるのだ。
ダイオウホウズキイカが生きる暗闇の深海では、こうした生物発光が、警告信号として機能する。そのおかげでダイオウホウズキイカは、近づいてくるマッコウクジラを、かなり遠く(最大120m)から感知できる。
この能力は、ダイオウホウズキイカの生存にとっては重要だ。遠くから生物発光を感知すれば、捕食者に対する逃避反応を準備するために必要な時間を得られる。つまり、ダイオウホウズキイカの巨大な眼は、全般的な視覚だけでなく、深海での捕食者検知の目的でも使われているということだ。深海での生存は、多くの場合、そうした微妙な視覚的手がかりをとらえて反応する能力にかかっている。
前述したように、ダイオウホウズキイカが特定・命名されたのは1925年だったので、2025年は100年目の節目となる。そうしたなか、ダイオウホウズキイカに関する数々の謎を解こうとする、コロッサル・プロジェクトなどの取り組みが強化されている。これらの取り組みは、ダイオウホウズキイカの生態、行動、そして深海生態系におけるその役割をもっと詳しく知ることを目的にしている。


