ダイオウホウズキイカは、「深海巨大化」の産物
「島嶼巨大化(island gigantism)」という現象について、聞いたことのある人もいるかもしれない。これは、隔離された場所にいる種が、巨大なサイズになる現象のことだ。深海巨大化(Abyssal gigantism)はそれと同じような概念だが、こちらは深海で起きる。
2006年9月に『Journal of Biogeography』で発表された論文によれば、深海は基本的には島と同じように機能するという。どちらの環境も、食物が十分には存在せず、それが独特な進化圧を生む。
深海では、体の小さい種が進化して、かなり大きくなることがある。体の大きさは、以下のような理由で利点になるからだ。
・体が大きいほど、エネルギーを蓄えられる潜在力が大きくなる。このことは、食物を手に入れるのが難しい生息環境では重要だ
・加えて、寒くて暗い深海では生物学的なプロセスの速度が遅い。こうした環境では、体が大きい方が生き延びやすくなる可能性がある
巨大な体をもつダイオウホウズキイカは、深海巨大化によって深海生物が極限環境で繁栄できることを示す最たる例だ。
この巨大イカの寿命は40年ほどで、水中戦車さながらの体の持ち主でもある。大きいものでは体長46フィート(約14m)、体重1091ポンド(約490kg)にもなり、地球上において最大級の無脊椎動物となっている。
たいていのイカは、細長い流線形の体を持っているが、ダイオウホウズキイカはそれらとは異なり、がっしりした、頑丈でたくましい外套膜をもつ。この外被のおかげで、頑強な体の構造になっているのだ。これは、深海環境のすさまじい圧力を耐えるのに役立っている可能性がある。


