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2025.09.19 13:30

「一子相伝なかむら」7代目、中村元紀が見つめる日本料理の未来:30UNDER30

中村元紀|「一子相伝 なかむら」7代目

大学を卒業したら、父と同じように寺で修行しなさいという祖母、どこかの料理屋で修業しなさいという父。それにただ従うことに、抵抗があった。そんな時に見たのがスタジオジブリ制作の『人間は何を食べてきたか』というドキュメンタリーだった。人の食の根源とは何かを考えさせられ、それを深めたいと思いながら、台湾を訪れた。

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「節句ごとのお飾りなど、日本では高級日本料理店でしか見かけないような四季折々の歳時記が今も暮らしに息づいている。食への知恵と工夫が詰まったこの地に身をおいたら面白いかもしれない」。本能的にそう感じたという。

京料理の老舗のなかでも一子相伝なかむらがユニークなのは、主人は包丁を握らず料理人を雇うのが主流だった時代も、代々当主が料理をしてきたことだ。「あらめ(荒布、昆布の一種)の炊いたん」のような、素朴なおばんざいを洗練させた一皿など、日常食を生かした料理を特徴とし、「だからこそ、ふとまた食べたいと思って来てくださるお客様が多くいらっしゃる」と中村。台湾で食に向き合う市井の人々に、そんな「なかむら」の原点ともいえる姿を見た。

憧れの小林圭の「外国に行くなら、その国の言葉をきちんとマスターした方がいい」という言葉を思い出し、家族の反対を押し切って台湾の大学に留学。国際言語学を専攻し、中国語を学びながら、レストランやベーカリーなどで研修を重ねた。

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台湾での時間は、意外な学びを与えてくれた。「身近な掛け軸などにある禅語のちょっとした言い回しは、日本語で調べても深い意味はわからないが、中国語がわかると、誰のどんな言葉なのか、由来までしっかりと理解できる。日本独自の進化を遂げてはいるものの、歳時記は元はといえば中国大陸の文化。日本料理を大きな歴史の流れの中で捉え直すことができるようになった」。

また、中国本土にもわたり、茶や麺類の起源を辿るなど、日本料理の「来し方」を深めた。「紹興酒や豆板醤の作り方も学び、日本酒や醤油の醸造と対比し、より深く捉えることができるようになった」という。

「店は一人ではできない」

そうして3年が経った2021年、ビザの更新のために帰国。両親が店を切り盛りする間、親代わりで面倒を見てくれた祖父母が年齢を重ねているのを見て、皆が幸せになる形はなんだろう、と考え、台湾の大学を退学し、父の横で働き始めた。

父のもとで修業してきたスタッフが多いなか、突然戻ってきた“ぼん”が、海外若手シェフとの交流など、店の外の仕事をする。そんな状況にスタッフとの溝が深まってしまい、一人、二人と辞めていき、ついには2023年の年末、父と自分、2人だけになり「どないしてくれてんねん」と父に呆れられた。40席の店の料理を、2人でつくらなくてはならない。毎年恒例のおせちづくりも待っている。痛烈な教訓だった。

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文=仲山今日子 写真=帆足宗洋(AVGVST)ヘアメイク=MIKAMI YASUHIRO

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「30 UNDER 30」2025

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