経営・戦略

2025.11.18 13:59

中堅企業のITリーダーシップ改革:AI時代に求められる組織再設計

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リチャード・リックス氏は、2014年に自ら設立したシルバー・ツリー・コンサルティング・アンド・サービスのCEO兼創業者である。

テクノロジー人材は、ビジネス主導型ITの新時代の境界線上にいるだけでなく、すでにその中に足を踏み入れている。適応すべき時は今だ。

かつて、有能なITチームの構築は単純明快だった。ネットワーク管理者、開発者、ヘルプデスクのスタッフを雇い、必要に応じてセキュリティやクラウドの専門家を加えればよかった。しかし、そのような時代は終わった。

AI、自動化、クラウドネイティブなエコシステムが、ほとんどの中堅企業が適応できるペースを上回るスピードで職務内容を書き換えている。今日のテクノロジー人材は、新たな技術スキルを持つ人材を雇うだけでは不十分だ。それは単に役割を埋めるのではなく、成果を出すための人材の再設計が必要なのである。

AIの影響:役割は消滅ではなく変化している

見出しではしばしばAIがテクノロジー人材への脅威として描かれる。しかし現実はもっと微妙だ。定型業務は消えつつあり、専門的な役割が生まれ、AIリテラシーが全員に不可欠となっている。

• 定型業務の排除:チケットの選別、監視、QAテストはますます自動化されている。

• 専門的役割の創出:AI統合の専門家、データ倫理学者、ガバナンスリーダーの需要が高まっている。

• 普遍的なAIリテラシーの要求:非技術系スタッフでさえ、AIツールが意思決定やプロセスにどう影響するかを理解する必要がある。

中堅企業にとって、この変化はジレンマをもたらす。彼らは人材獲得において大企業の競合に勝つことはできない。しかし同時に、AIの可能性を活用する準備ができていない人材を抱える余裕もない。

リーダーシップとオーケストレーションが新たな差別化要因

技術的スキルだけでは、この新時代で誰が成功するかを決定づけることはできない。今日最も重要なギャップは、テクノロジーとビジネス成果をオーケストレーションする役割にある:

• 組織変革管理(OCM)の推進:従業員が新しいツールやプロセスを採用することを確実にする

• プログラムとプロジェクトのリード:混乱なくデジタル戦略を実行に移す

• プロダクトオーナーシップ:ITとビジネスの橋渡しをし、測定可能な価値を提供する取り組みを優先する

私の経験では、デジタル施策の失敗は、コードの不備よりも、方向性の不一致と採用の欠如によるものが多い。リーダーシップとオーケストレーションの役割に投資する企業は、乗数効果を生み出す:テクノロジー投資からより多くの価値を引き出し、成果への到達時間を短縮するのだ。

未来は部門横断的で柔軟性がある

現代のリーダーはもはやサイロ化された形で人材を構築することはできない。従来のインフラストラクチャー対アプリケーションという組織図では、今日のデジタル施策の複雑さに対応できない。

代わりに、部門横断的で成果志向のチーム—しばしばポッドやスクワッドと呼ばれる—が標準になりつつある。これらのチームは3つの重要な要素を組み合わせている:

• 戦略的な採用:リーダーシップと高度に専門化された役割の人材を採用する

• マネージドチームの活用:クラウド移行、AI統合、セキュリティ運用などの取り組みのために、完全に管理されたユニットを配備する

• 選択的な増強:短期的なギャップやニッチな専門知識を、的を絞った増強によって埋める

中堅企業のリーダーにとって、鍵は俊敏性だ。社内の人材と柔軟な外部の専門知識を組み合わせることで、企業は人員を膨らませることなく、自分たちの規模以上の成果を出すことができる。

業界特有のプレッシャーが変化を促進している

すべてのセクターがこの人材の進化を異なる形で経験している。しかし、変化が機会と成長の可能性をもたらすことを認識することが重要だ。

• ヘルスケア:AIを活用した診断と患者エンゲージメントには、データの専門家と採用を確実にするためのOCMが必要だ。

• 金融サービス:自動化と規制のプレッシャーにより、プログラムリーダーシップとリスクに沿った役割の需要が生まれる。

• 製造業:インダストリー4.0(製造技術における自動化とデータ交換の現在のトレンド)とIoTには、運用技術(OT)とITを橋渡しする強力な統合スキルを持つチームが必要だ。

• 保険:デジタル請求と引受には、技術的可能性をビジネス成果に変換するプロダクトオーナーが必要だ。

業界を超えて、共通点は明確だ:採用を促進し成果をオーケストレーションする役割が、今や極めて重要なミッションとなっている。

中堅企業の必須課題

中堅企業は、大企業レベルの予算なしに大企業レベルの複雑さに直面している。つまり、彼らは明日の人材を単なる採用問題として扱うことはできない。

代わりに、彼らは4つの計画的なステップを踏む必要がある:

人材の監査:将来の取り組みに対する現在の人材の評価。

• リーダーシップ役割への投資:技術的な採用と並んで、組織変革とプログラムリーダーシップを優先する。

• ハイブリッドモデルの採用:戦略的採用、マネージドポッド、的を絞った増強を組み合わせる。

• 成果への集中:人員数ではなく、ビジネスへの影響によって成功を測定する。

次のデジタル施策の成功または失敗は、まだ構築していないチームにかかっている。

中堅企業のリーダーへの呼びかけ

テクノロジー人材はもはや実行だけの問題ではない。それはオーケストレーション、柔軟性、AI対応力の問題だ。中堅企業のリーダーは、これらの重要な質問を自問すべきだ:

• 私たちは変化を実装するだけでなく、主導するための人材を配置しているか?

• 私たちは組織図ではなく、成果を中心に部門横断的なチームを設計しているか?

• 私たちは人材に過度な負担をかけることなく、俊敏性を維持するために外部の専門知識を活用しているか?

これらの質問に正直に答え、迅速に行動する企業は、AIを活用し、変革を加速し、真のビジネス価値を引き出す態勢を整えることになるだろう。

次の段階への準備

中堅企業のリーダーにとって、課題は明確だ。明日の人材を構築することは、より速く採用したり、あらゆる新しいスキルを追いかけたりすることではない。それは、AIと自動化が常に仕事を再形成する世界で、適応し、変化をオーケストレーションし、成果を出すことができるチームを設計することだ。

このアプローチを取る人々は、単に歩調を合わせるだけでなく、テクノロジーの変化を真のビジネス上の優位性に変える準備がより整っていることに気づくだろう。


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