仕事を失う、人生が変わるような医学的診断を受ける、恋人との破局を経験する、愛する人を失う━━。「普通」の崩壊ほど無敵感と安心感を揺るがすものはない。これらの危機が引き起こす反応は人によって異なるかもしれないが、ほとんどの人が人間の存在の不確かさに対する恐怖感を味わう。
残念なことに、現代の文化においてはこうした出来事で感じる不安を受け入れる余地があまりない。私たちはただ「前向きに過ごして」と声をかけられ、すぐに「立ち直れる」と言われる。だが誰が何と言おうとも、そうした出来事がもたらす悲しみや不安は常に何らかの形でいつまでも残る。
だが、こうした不安は問題ではない。むしろ、私たちはそうした不安を感じることはないと思っていることが問題だ。
学術誌『Journal of Positive Psychology（ジャーナル・オブ・ポジティブ・サイコロジー）』に今年掲載された研究の著者である実存心理学者のプニニット・ルッソ・ネッツァーは、このような不安を感じる瞬間がより確かな人生への鍵を握っている可能性があるとインタビューで説明してくれた。「不測の事態に直面して動揺したり不安になったりするのは、弱さの表れではない。極めて人間らしい反応だ」とルッソ・ネッツァーは言う。
その不安を押し殺すのではなく、ルッソ・ネッツァーは「実存的真正性」と呼ぶものへの入り口として活用し始めるべきだと提案する。ルッソ・ネッツァーの研究によると、その方法は以下の通りだ。
実存的真正性
実存的真正性とは、ありふれた意味での「自分自身に正直であること」ではなく、存在そのものに正直であることだ。ルッソ・ネッツァーはそれを端的に表現している。「実存的真正性とは、人間の存在の脆く、有限で、不確かな本質をはっきり意識して生き、そして自分の選択に責任を持つことだ」
哲学者たちは何世紀にもわたって、存在と真正性をめぐる問いと格闘してきた。学術誌『Current Directions in Psychological Science（カレント・ダイレクション・イン・サイコロジカル・サイエンス）』に掲載された研究によると、実存心理学者は、人生には5つの究極的な関心事があると指摘しているという。
1. アイデンティティ
2. 死
3. 自由
4. 意味
5. 孤立
私たちは人生におけるこれらのテーマや、それらが私たちの中に植え付ける恐怖から逃れることはできないが、それらにどう反応するかを選ぶことができる。
ルッソ・ネッツァーは研究の中で、実存主義の中心人物の1人である哲学者マルティン・ハイデガーに言及している。ハイデガーは人生における「存在」の2つの中心的な状態について述べている。習慣や文化的な期待に没頭し、自動操縦で動いている状態の「存在の忘却」と、一歩引いて人生の不確実性に向き合い、人生の進むべき道を意図的に選択する状態の「存在のマインドフルネス」だ。
