政治

2025.09.16 11:30

不確実性と実験に満ちた「空位時代」に突入する世界 「旧体制」復古は茨の道

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より穏やかな見通しとして、「新しい世界秩序」(これについては以前のコラムで素描したことがある)に向けた道が「復古」につながっていく可能性もまだある。とはいえ、その道にはまず、山のように大きな障害がいくつか立ちはだかることになるだろう(友人はジェームズ・マーティンの著作『The Meaning Of The 21st Century(仮訳・21世紀の意味)』に「峡谷」という似たような比喩があると教えてくれた)。

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こうした障害は、気候危機、債務危機、そして民主制またはガバナンス(統治)の危機といった形をとると筆者はみている。これらの危機に国際社会がどう対応するかが「復古」に至るかどうかを左右し、そこでは主要な国・地域が政策面で協調できるかが試金石になりそうだ。この文脈で、グローバリゼーションの終焉を早い段階で裏づけた事例のひとつは、新型コロナ危機の際に米国と中国、そして(両国間ほど顕著ではないものの)欧州の間で協力が乏しかったことである。

債務危機の場合、“世界を救う委員会”的な組織が存在しなければ、市場のボラティリティー(変動性)は格段に大きくなり、資産価格へのダメージもはるかに深刻になるおそれが強い。また、危機を乗り越えたあとも、銀行システムや経済の回復により長い時間を要したり、回復が不均一になったりしそうだし、よりローカルなコーポレートガバナンス(企業統治)制度の導入が進む(ここでは中国が決定的に重要だ)ことも想定される。反対に、債務危機への対応で各国・地域の中央銀行が協調したり、政府が国際的な解決策を取りまとめたりすれば、金融面のダメージは軽減されるだろうし、さらに危機後、よりグローバルな金融システムが生まれる素地が整う可能性すらある。

「復古」という概念についてはまだ考え始めたばかりだが、筆者が懸念しているのは、完全で一貫した復古というものは、さまざまな危機を経て、あらゆる拙劣な選択肢が尽くされたあとにしか訪れないのではないか、ということだ。

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forbes.com 原文

翻訳・編集=江戸伸禎

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