インドの農村地域で時間を過ごせば、なぜイノベーションが箱に詰めて輸入できないかがわかるだろう。人々は「テクノロジー」を購入するのではなく、対処法や制約、長い記憶に満ちた環境の中で、完了すべき仕事のためのソリューションを採用している。現場に深く入り込まなければ、完了すべき仕事（Jobs to be Done）を見逃してしまう—そして市場も逃してしまう。
この点は、エスコート・クボタ社で製品・ポートフォリオ変革の中心的役割を担い、トラクター戦略全般にも積極的に関わるランジット・タクール氏との最近の会話で鮮明に伝わってきた。日本に本社を置く200億ドル規模のトラクターメーカーであるクボタはプラットフォームを提供しているが、タクール氏のアプローチは自身の25年の経験によって形作られてきた。彼はそれを「顧客センシング」と呼び、言葉にされていないことに耳を傾けることから始める。農家は「傾斜地でトラクターが持ち上がるのを防ぐための適切なフロントリアクション」を求めたりはしない。彼らは「川底から上がるとき、トラクターの前部が持ち上がる」と言うだろう。完了すべき仕事は、傾斜地での安定した牽引力だ—仕様でもなく、機能でもない。それをエンジニアリング言語に翻訳するのは製品チームの仕事だが、完了すべき仕事を発見するのは全員の仕事だ。
私の著書『Jobs to Be Done』では、ジョブを正しく枠組みするには深い顧客理解が不可欠だと主張している。これは識字率にばらつきがあり、インフラが不十分で、流通コストが不要な装飾品に罰則を与える場所では特に重要だ。タクール氏はイノベーションの成熟度を判断力と表現している：何を構築し、何を削除し、いつ一時停止し、いつスケールアップするかを知ることだ。製品管理における数十年の経験を活かし、タクール氏はこの判断力が電動トラクターに対する彼のチームの初期の姿勢を導いたと説明する—このコンセプトはインドで約8年前に導入され、彼とエスコート・クボタ社の同僚がEVプロトタイプの実験を始めた時だった—しかし彼はエコシステムが整うまで時期尚早なスケールアップに抵抗した。彼の信条は、市場はダイナミックであるため、計画もそうでなければならないということだ。
まず深い没入、後から定量化
タクール氏とそのチームは、もっと多くの企業が採用すればと思うような混合手法のリズムを使用している。初期の作業はオープンエンドで現場での作業—同行、現地確認、農場での対話だ。パターンが現れ始めると、彼らはMaxDiffやコンジョイントなどの構造化された手法に移行し、トレードオフの明確化を強制する。つまり、発見のための定性的手法、決定のための定量的手法だ。タクール氏が製品関連の役割での経歴から振り返るように、各手法は異なる質問に答えるため、この順序が重要なのだ。
行動変容 > 機能リスト
トラクター以外の2つの例は、完了すべき仕事のための設計—そしてそれらを可能にする行動変化がどのようなものかを示している。
1) サルバジャルのウォーターATM：信頼を設計した従量制の清潔な水。 ピラマル・サルバジャルは水浄化ボックスの販売を試みなかった。このインドのNGOは、分散型でソーラーパワーの浄化ユニットと、プリペイドスマートカードやコインで手頃な価格の水を提供する「ウォーターATM」のネットワークを構築した。各ATMはクラウドに接続されてリモート監視が可能であり、すべての取引が記録され、予測メンテナンスと透明な価格設定を可能にしている。フランチャイズモデルは地域のオーナーシップとサービスの説明責任を生み出す。テクノロジーの話のように聞こえるが、実際には行動の話だ：手間を減らし、透明性を高め、支払いを身近に感じさせる（携帯電話のようにスマートカードをチャージする）ことで、家庭を不規則で疑わしい水源から信頼できるオンデマンドの水へと移行させる。
2) ステラップスのデイリースタック：まず牛乳をデジタル化し、次にお金を。 インドのアグリテック企業ステラップスは、牛乳の収集をデジタル化することから始めた—自動牛乳分析装置、村のセンターでのデータ収集、品質向上と漏れを減らすためのクラウドバックエンド。測定とIDの信頼性が確立されると、同社は協同組合向けの農家直接デジタル決済レイヤーであるmooPay（ムーペイ）を立ち上げた。これは長年の農家の行動を変える方法を理解した上でのシステム転換だった。
農村部の製品戦略のための4つのフィールドルール
新興市場での長年の仕事（そしてこのフォーブスの記事でクレイトン・クリステンセンと共に書いたように）を通じて、パイロットプロジェクトとスケールアップを分ける4つのルールを見つけた。タクール氏の経験と上記の他の事例は、これらを裏付けている。
1) 不満を完了すべき仕事に翻訳する。 「トラクターが斜面で前部が持ち上がる」は仕様の要求ではなく、安全で予測可能な牽引力についてのジョブステートメントだ。同様に、「牛乳の支払いに時間がかかりすぎる」は家計のキャッシュフローを円滑にすることについてであり、「アプリを作ろう」ではない。文脈→苦労→成功した結果→可能にする機能という因果関係をマッピングしよう。
2) 意図を持って手法を混合する。 フォーカスグループ（言語化に限界がある）やアンケート（偽りの精度）に過度に依存しないこと。作業を観察し、一対一で話し、選択肢が現実的になったときにトレードオフを定量化する。クボタチームは、フィールド訪問、焦点を絞ったグループディスカッション、構造化された定量分析の3つすべてを循環させている—それぞれが異なる質問に答えるからだ。
3) 構築しないものを早期かつ明示的に決定する。 私の著書『Costovation』では、スマートコストは成長戦略であると書いた：深い理解はより安価である、なぜなら結果を変えないものの構築を止めるからだ。タクール氏はそれをポートフォリオ規律で実践している—アイデアは始めるのは簡単だが殺すのは難しいので、彼らは「キル」の会話を前もってスケジュールする。彼のルーブリック（構築、削除、一時停止、またはスケール）は、リソースを市場の現実に合わせて維持する。
4) センシングを年次オフサイトではなく週次の習慣として扱う。 農村市場は一夜にして変化することはめったにないが、信用規範、作物サイクル、地方政治、気象パターン、大手バイヤーの動きなどの要因によって常に変動している。クボタの農家、ディーラー、さらには競合他社のチャネルパートナーとの定期的な通話のリズムは、大きなことが「青天の霹靂」として起こらないことを意味する。完璧に予測するからではなく、早期に気づくから回復力があるのだ。
過度に一般化する誘惑
西洋の輸出業者は時々「インドのプレイブック」を探す。そんなものはない。理解すべき完了すべき仕事とその文脈があるだけだ。トラクターの場合、それは転倒せずに川底から登ること、水の場合、タンク車を待たずに安全な水を購入すること、牛乳の場合、書類が不完全でも迅速かつ公正に支払いを受けることかもしれない。製品を完了すべき仕事によって定義し、容赦なく謙虚なセンシングを実践するとき、私たちはスケールアップする権利を獲得する。
テクノロジーは簡単な部分だ。難しいのは人々が仕事をこなす方法を変えることだ。そこで深い没入が成果を上げる。そして、完了すべき仕事を深く理解している企業が常に優位性を持つところだ。
