中国製兵器の製造も、先に述べたとおりベラルーシで行われている。少なくとも2022年以降、中国企業「深セン5G」がベラルーシの防衛企業ペレングの仲介役を務めており、中国製、日本製、台湾製のモーターやセンサー、光学機器がペレングを経由してロシア軍の前線に供給されている。
米財務省はペレングを「ロシア主力戦車向け射撃管制システムの独占供給元」と位置付けている。
現代の軍事サプライチェーンは、多国籍の供給源が複雑に絡み合って構築されている場合が多い。49%国有のベラルーシのペレングと、同社がウクライナの戦争に直接的な影響を及ぼしていることは、まれな例外だ。ベラルーシが公然と特定可能な形でリスクを冒している珍しい事例といえる。
このようなベラルーシのあからさまな供給に対する中国の協力もまた、ロシア・ウクライナ紛争への関与を示唆する極めて明白なやり方であり、中国政府が公式に表明している中立姿勢とはかけ離れている。
では、なぜベラルーシとの軍事提携にこれほどの投資をするのだろうか。
ロシアにとってベラルーシは、ウクライナ軍を北の国境沿いに縛り付ける役割を果たしている。たとえベラルーシが全面参戦する可能性が低くとも、ウクライナはその存在を無視できない。また、ベラルーシを経由すればロシアは弾薬や物資を目立たない経路で入手でき、さらにミサイルや砲弾を安全に保管しておくこともできる。少なくともベラルーシが直接的な敵対行動に出ない限り、ウクライナに攻撃されない安全な弾薬庫として機能するのだ。
この保管庫効果は、イランがベラルーシとの関係を深める理由の説明にもなるだろう。つまり、ベラルーシはイランなどの立場の弱い国々が自国の兵器を安全な場所(イランにとってはイスラエルの攻撃を受けない場所)に保管するためのオフショア拠点を提供しているわけである。もちろん、制裁を回避するという単純な意味合いもある。規制対象の部品や技術の流通経路として、ベラルーシは密かに制裁を破るための便利な中継地点となっている。
こうしたあらゆる点で、ベラルーシは独特の政治的立場を占めている。ロシアが戦争を遂行するための機構の中で、小さくとも活発で、しかもなぜか手出しできない存在と化しているのである。


