「愛すること」と「働くこと」
人生には思いがけない展開が訪れるのだと、今では確信しています。だからこそ、UNDER30のみなさんには、不安や迷いを抱えながらでもワクワクしながら歩んでほしいのです。挑戦すれば必ず壁にぶつかり、挫折や悲しみを経験することもあるでしょう。しかし、そのすべてが未来の糧となります。
そして大切なのは、「愛すること」と「働くこと」の両立を諦めないことです。落ち込んだときには、周囲が敵に見えることもあるでしょう。私も夫を亡くした時、世界中が敵であるように感じ、孤独感に苛まれました。
でも結局は、人に助けられて生きているということがわかりました。候補者として推薦された時も、現在も、支援してくださる方々がいるからこそ、今の私がいます。人間は「人と人との間」と書くように、一人では生きていけません。
両立が難しいときには、人に頼ってください。社会制度を活用してください。そして、人の力を借りた分は、将来の自分が返せばいいのです。辛いときほど、人に頼るのが一番です。
恐れず、焦らず、あなたらしく
それと、知事になった直後にある官僚の方から「自然体を保つことが大事。自分を飾れば必ずボロが出る」と言われたことがあります。知事になったばかりで「全て一生懸命やらないといけない」と気を張っていた私にとって、その言葉にとても救われました。私は特別に優しいわけでも、カリスマ性があるわけでも、強力なリーダーシップがあるわけでもありません。ですが、自然体でいることを心がけることで、周囲も安心し、信頼してくださるのだと思います。
頑張ることも大事ですが若いときからすべてを上手くこなせる人はいません。飾らず人間らしくいることで、周りが応援してくれるのだと思います。
人生は思いがけないチャンスを運んできます。そのときに備えて、日々「爪を研いでおく」ことを忘れないでください。準備を重ねていれば、訪れたチャンスをしっかりとつかみ取ることができます。恐れず、飾らずにあなたらしく進んでみてください。
吉村 美栄子(よしむら・みえこ)◎山形県知事。1951年山形県生まれ。74年お茶の水大学卒業、リクルート入社(77年まで)。81年子育てしながら行政書士の資格を取得。2000年に山形県内で行政書士開業。この間、山形県総合政策審議会委員をはじめ、山形県教育委員会委員などを歴任。2009年に山形県知事に就任し、現在5期目。


