「日本企業はマルチステークホルダー・エンゲージメントの達人か、初心者か?」──ブランズウィックが実態を解明
この“経営の対話力”に日本企業はどこまで対応できているのか? その実態を明らかにするため、エンゲージメント戦略分野を得意にする戦略コンサルティング・ファームであるブランズウィック・グループは、日本企業を対象とした調査を実施し、先般その分析結果を公表した。
調査は、日本の上場企業の独立社外取締役22名へのインタビュー、および、年商100億円以上の企業の部長職以上517名へのオンライン調査によって構成される。その結果、約66%が「マルチステークホルダー・エンゲージメント」という言葉を認知し、うち約61%がすでに何らかの形で取り組んでいると回答した。
一見、浸透しているようにも見える。だが深掘りしてみると、「実態は形骸化している」という声も多かった。ある社外取締役は、「証券取引所や省庁の要請に応じて、“とりあえず書いている”だけ。本来の意味を理解していない企業が多い」と語る。
つまり、「マルチステークホルダー・エンゲージメントに取り組んでいる」とは言っても、その多くは従来の業務プロセスに埋め込まれた対話(平時対応)であり、変化や危機への戦略的対話には至っていないのが現状だ。
戦略課題対応型マルチステークホルダー・エンゲージメントとは何か?
調査結果と併せて、ブランズウィックがレポートで提起した概念が、「戦略課題対応型マルチステークホルダー・エンゲージメント」である。
これは、単なる説明や調整ではなく、企業が変化を起こしたい、あるいは突発的な有事に対応したいときにこそ必要な対話力であり、業務横断で組織を束ねる「動的な連携体制」が求められる。
たとえば、以下のような場面が該当する:
・海外進出時に現地規制当局やコミュニティとの合意が必要なとき
・ESG対応でNGOやメディアが注目しているとき
・アクティビスト株主から経営に関する提案が届いたとき
・誤報やネット炎上でレピュテーションリスクが高まったとき
これらは全て、多くのステークホルダーを巻き込み、従来の「誰が」「どの部署が」という体制では乗り越えられない。経営企画、法務、IR、広報、時に現場責任者までが横断的に関与し、CEOがリーダーシップを発揮する全社的なエンゲージメント設計が求められる。


