Forbes JAPAN本誌で連載中の『美酒のある風景』。今回は9月号(7月25日発売)より、「ドン・フリオ 1942」。ヴァニラやキャラメルなど甘いニュアンスを感じさせながらも、アガベ本来の爽快な香りとアーシーな(土っぽい)風味を感じられる1本だ。
テキーラといえば、レモンスライスを片手にショットで楽しみ、その口当たりの良さについ飲み過ぎて翌日は二日酔い…‥安価に酔える酒というイメージをもたれていたかもしれないが、その図式は2000年代に誕生したプレミアムテキーラという概念によって大きく変化している。
100%ブルーアガベを使用し、丁寧に熟成されたプレミアムテキーラは、ウイスキーやブランデーに匹敵する深い香りと味わいをもつ。それは単なる酔いを求める飲み物ではなく、時間をかけて味わい、体験する嗜好品へと昇華された。
なかでも象徴的なのが、2002年に登場した「ドン・フリオ 1942」だ。メキシコの高級テキーラブランド「ドン・フリオ」が、創業者ドン・フリオ・ゴンザレスの功績を称えてリリースしたテキーラは、ハリスコ州産の最高品質のブルーアガベを伝統的な釜で加熱し、アメリカンオークのバーボン樽で2年半にわたって熟成したアネホ(熟成)タイプ。アガベの葉をモチーフにしたというボトルデザインも優美な、ラグジュアリーなテキーラの代表格だ。
「樽の影響からヴァニラやキャラメルなど甘いニュアンスを感じさせながらも、アガベ本来の爽快な香りとアーシーな(土っぽい)風味を感じさせます。この複雑な味わいはゆっくりと堪能いただきたいですね」
そう語るのは「Gold Bar at EDITION」(東京・神谷町)でバーテンダーを務める岸田茉利奈。黒ゴマやアーモンドのプラリネが香ばしいチョコレートムースと合わせることで、「ドン・フリオ1942」の甘やかな余韻をより長く楽しめるペアリングを提案してくれた。実際、同バーでもプレミアムテキーラ人気は顕著な傾向であり、グラスで飲まれるのはもちろん、グループでボトルをオーダーし、1本をじっくりと楽しむ機会もしばしば見受けられるのだとか。
それを聞いて思い出したのは、映画『ソーシャルネットワーク』(2010年公開)のワンシーンだ。フェイスブックの創始者マーク・ザッカーバーグと、プライベートでもテキーラ好きで知られるジャスティン・ティンバーレイク演じるショーン・パーカー(ナップスター創業者)が契約成立時に祝杯を挙げたのは、この「ドン・フリオ 1942」だった。乾杯するのにシャンパーニュではなくテキーラ?と当時は意外に思ったものだったが、時が移れば世も変わる。「ドン・フリオ1942」は、成功者が祝杯を挙げるにふさわしい一杯として、ミレニアル世代を中心に定着しているようだ。
ドン・フリオ 1942

容量|750ml
度数|38%
価格|25000円(希望小売価格)
問い合わせ|ディアジオ ジャパン 0120-014-969(平日10:00~17:00)



