クラスター数ランキング
クラスター数は次のとおりである。
中国:230クラスター
米国:187クラスター
フランス:18クラスター
韓国:13クラスター
ドイツ:12クラスター
サウジアラビア:9クラスター
UAE:8クラスター
インド:8クラスター
英国:6クラスター
フィンランド:5クラスター
中国は全体の計算能力では意外な遅れを取っているように見えるが(米国の貿易制限の影響が小さくないためでもある)、AI計算施設の数の多さは別の物語を語っている。電力面の課題があるのは確かで、世界最多のクラスターと約62万9000個のチップを保有しているにもかかわらず、中国の計算能力はH100相当でわずか40万にとどまり、世界全体で7位に過ぎない。これは同国のAIの実力を大きく制約している。
しかし、孫子の『兵法』的にいえば、その弱点は隠れた強みになり得る。
中国のインフラのプロファイルは、DeepSeekのような「効率最優先」の大規模言語モデル(LLM)設計といったアプローチを説明する助けになる可能性がある。米国やUAEに比べて計算資源が制約されているため、中国のAI研究所は学習手法の最適化やアルゴリズム効率の追求に傾きがちである。その結果、推論コストの削減に注力し、はるかに少ない計算コストでほぼ同等の成果を引き出す方向性が生まれている。
「AI覇権をめぐる戦いは多方面で進行しており、生の計算能力ははるかに大きなパズルの一片にすぎません」と、この報告を作成したTRG Datacentersの担当者はメールで述べた。
アラブ首長国連邦とサウジアラビアは、AIの超大国としては意外な存在かもしれないが、両国は石油による富を、将来の富を生むと見なすテクノロジー――人工知能――へと表立って投資している。これに比べて伝統的な欧州の強国であるドイツ、英国、フランスは大きく後れを取っている。
とはいえ、電力、チップ、計算センターはAI超大国のパズルの一部にすぎない。AIで卓越するには、計算資源に加えて、チップ生産、AI人材、労働力と企業での導入、後押しする政府規制、そして活発なAIスタートアップのエコシステムが必要である。
少数の国だけが世界的なAI覇権をある程度達成するなら、競争力、経済および金融の力の集中、現代生活に不可欠な中核技術の支配、そして多大な社会・文化的影響力といった、広範な帰結をもたらし得る。
同報告によれば、今年のAI投資は過去最高の2000億ドル(約29兆4800億円)に急増しており、AI覇権をめぐる争いが激しさを増していることを示唆している。
当面、米国が先頭を走るものの、AI超大国の世界地図は驚くべき形で変化している。


