地球外知的生命体の電波信号を求めて、天文学者は何十年も空を探査し続けているが、これまでのところ何の信号も(Wow!シグナルは例外かもしれないが)受信できていない。だが、その理由は、適切なタイミングで適切な場所を観測していないからだとする研究結果が最近発表された。
米ペンシルベニア州立大学の天文学者ピンチェン・ファンと研究チームは、NASAが行った深宇宙(遠方の宇宙空間)との電波通信の記録20年分を詳細に調査し、通信の電波信号を人類レベルの技術で最も検出しやすくなる可能性のあるタイミングと場所、および地球外知的生命体の電波信号を探査すべき場所に関する手がかりを探した。今回の研究結果をまとめた論文は天文学誌The Astrophysical Journal Lettersに掲載された。
地球外知的生命体の宇宙計画を(あると仮定して)傍受する方法
宇宙のどこかに人類とほぼ同等レベルの技術を持つ地球外知的生命体がいるとすれば、人類と同じようなことをしている可能性があると仮定するのは理にかなっている。すなわち、自分たちの恒星系にある他の惑星を調査するために探査機や探査車を送り込んだり、宇宙望遠鏡をラグランジュ点に配置したり、これらと電波で交信したりしているかもしれない。そうすると、この仮定上の太陽系外恒星系から漏れ出てくる電波信号は、太陽系から漏出する電波信号と非常によく似ているかもしれないわけだ。
ファンは「人類の最も一般的な信号の方向と頻度を考察することにより、地球外文明のテクノシグネチャー(技術文明の存在指標)を地球から検出する可能性を高めるにはどの場所を探査すべきかに関する洞察が得られる」と、最近発表された声明で述べている。
NASAの最も強力な電波発信機の信号は、太陽系内の特定の場所、すなわち主に火星と付加的に他の惑星およびジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)の方向に送信されていることが判明している。人類は単に何もない空間に向けて発した信号を誰かが受信してくれるのを願っているのではないため、地球外知的生命体もそうではないと想定するべきだ。
ファンと研究チームは、NASAの深宇宙通信情報網ディープ・スペース・ネットワーク(DSN)の20年分の交信記録を調査した。DSNは世界3カ所に配置された電波望遠鏡群で、NASAが遠方に送り込んだ宇宙探査機と交信するために使用している。DSNは、JWST、火星探査車、冥王星探査機ニューホライズンズ 、双子の探査機ボイジャー1号と2号など、基本的に地球低軌道(LEO、地表から約2000km以下の高度を周回する軌道)を越えたところにあるあらゆる対象と地上局との間で送受信する信号を伝達する。必然的に、この電波の一部が通信対象の周縁部から漏れ出し、宇宙空間を前進し続けることになる。



