誰もが手軽に扱える「自撮りドローン」として話題なのが、米国の Lily Robotics社の製品。今年5月に公開されたデモ動画は大きな注目を集めた。
そのLilyが投資家らからも多大な関心を集めていることが明らかになった。調査会社 VC Expertsのデータによると、同社は直近で1550万ドル(約17億円)のシリーズA資金調達を予定。ボストンのベンチャーキャピタルSpark Capitalが主導する今回のラウンドで、Lily社の市場価値は1億ドルとされている。Lilyは昨年既に100万ドルのシード資金を調達している。
今回の資金調達が実施されれば、まだプロダクトを世に出していない企業としては、異例の巨額資金調達になる。フォーブス編集部は昨年5月にLilyのテスト飛行を行い、この製品がほぼ問題無く作動することを確認した。Lilyを空中に放り投げると自律飛行を開始し、ユーザーの動きを追尾する動きを見せた。
一方で、英ガーディアン紙のように、ユーザー追尾には失敗したと報じたメディアもある。Lilyのユーザー追尾機能に関してはドローン業界の関係者の一部も懐疑的だ。この機能を実現するには、数年を要するのではとの見方もある。安全性の面でもまだ課題は残されている。
しかしながらドローン関連市場が加熱しているのは事実だ。特にコンシューマー向けドローンに対する期待は大きく、インテルは8月に中国メーカーのYuneecに6千万ドルの資金を注入した。これは同じく中国のメーカーEhang社が4200万ドルの資金調達を行ったことへの対抗だと思われる。ドローン業界を代表するDIJ社は5月に7500万ドルの資金調達を行っている。アクセルパートナーズはDJIの市場価値を80億ドルと見積もっている。
完成版のLilyは最大時速25マイル、高度10~30フィートでユーザーを追尾する。Lilyはハイビジョンカメラを搭載し、1080ピクセル、1秒60フレームで映像を記録する。この分野ではGoProもドローンのリリースを年内に計画中だが、Lilyはその競合製品となると見られている。
「僕らのライバルはアクションスポーツカメラのGoProだ」とLilyの共同創業者、Antoine Balaresqueは過去にフォーブスの取材に応えている。
「Lilyはよくあるドローンとは違うカテゴリの製品なんだ。ドローンというと僕にとっては軍事用品であり、空から人を攻撃したりするものだと思っている。Lilyはむしろ“空飛ぶカメラ”といった位置づけなんだ」
Lilyは加速度計やジャイロスコープ、気圧計やGPSなど多様なセンサーを内蔵し、ユーザーを追尾する機能を持つ。ユーザーが着用する専用のトラッキング・デバイスも用意されており、Lilyとペアで作動する。ただし、現時点でLilyは自動衝突防止機能を実装していない。このことはユーザーが障害物に接近しすぎた場合、簡単にクラッシュしてしまうことを意味している。