米マイクロソフトの創業者で、四半世紀近く米国で最も裕福な人物として君臨してきたビル・ゲイツが今年、同国の長者番付トップ10からついに陥落した。その理由について解説しよう。
ゲイツは長年、米国で最も裕福な人物として名をはせてきた。1991年以降30年近くにわたり、フォーブスが全米で最も裕福な400人を紹介する長者番付「フォーブス400」で、毎年1位か2位にランクインしていた。ところが2021年には4位に転落。そして今年、ゲイツは34年ぶりにトップ10の座から陥落した。
ゲイツは現在、フォーブス400で14位につけている。米ブルームバーグ通信の創業者マイケル・ブルームバーグの後を追い、米国(そして世界)で最も裕福な女性である米小売り最大手ウォルマートの相続人アリス・ウォルトンの1つ上という位置付けだ。
とはいえ、言うまでもなく、ゲイツは依然として莫大な富を有している。フォーブスの推定では、ゲイツの資産は1070億ドル(約15兆7500億円)で、1年前と変わっていない。
長者番付に名を連ねる他の億万長者がますます富を拡大する一方で、ゲイツは自ら「貧しくなる」ことを決めている。ゲイツは5月、今後20年間かけて資産の99%を自身の慈善団体である「ゲイツ財団」に寄付する意向を表明した。同財団は2045年、すなわちゲイツが90歳を迎える年に閉鎖されることになっている。
ゲイツは資産の99%を手放し、自身の財団に「年間数十億ドル」を寄付する計画だ。ゲイツはフォーブスの取材に対し、「市場の動向に多少左右されるため、(寄付金額は)毎年一定になるわけではない。私の死後は残りの全額を財団に寄付し、資産の使い道の決定権を財団に託すことを遺言に明記している」と説明した。フォーブスの推定によると、昨年のフォーブス400発表以降、ゲイツは自身の財団に70億ドル(約1兆300億円)寄付した。フォーブスは取材を試みたが、広報担当者からの回答は得られなかった。
ゲイツは27年間連れ添った妻メリンダとの離婚が成立した年以降、フォーブス400での順位を落としている。2021年に4位に転落した際の推定資産額は1340億ドル(約19兆7200億円)だった。ゲイツは昨年、推定資産1070億ドル(約15兆7500億円)で、9位まで順位を下げた。
資産の減少は、元妻メリンダがゲイツ財団の共同議長から退き、自身の慈善活動のために125億ドル(約1兆8400億円)を受け取ると発表したことに伴うものだった。その資金はゲイツの資産から支払われたものとみられる。フォーブスは、メリンダが慈善活動資金に加え、離婚協議の一環として290億ドル(約4兆2700億円)相当の資産を受け取ったと推定している。ゲイツとメリンダの広報担当者はいずれも、離婚協議に関するコメントを控えている。
10月に70歳を迎えるゲイツは、向こう数十年にわたるゲイツ財団の大きな目標を設定した。目標の1つは、母親と子どもの予防可能な死をゼロにすることだ。財団はまた、ポリオ根絶とマラリアの改善に向けた取り組みを継続する。これは感染症のまん延抑制を目指す財団の包括的取り組みの一環だ。その過程でゲイツは資産を減らし続け、フォーブス400の順位を引き続き下げていくことになるだろう。



