多くの人はずっと昔から社会のしきたりに従ってきた。学校へ行き、出世の階段を上り、家庭を築き、家を購入するために貯蓄をする、など。
それは自分自身と子孫の将来を安定させるためだった。だがZ世代は違う道を歩んでいる。一銭も無駄にしないのではなく、自分に「小さなご褒美」を与えている。こうしたささやかな贅沢はZ世代の間では当たり前のことで、TikTokでトレンドにもなっている。
そのご褒美はどんなものかというと、比較的高いコーヒー、リップクリーム、アロマキャンドル、そして最近流行っている「ラブブ」などだ。
Z世代の20%が毎日ご褒美を買う
NCSolutions(NCソリューションズ)が今年行った調査によると、小さなご褒美は多くの米国人にとって毎日の儀式になっている。調査参加者の62%がセルフケアに欠かせないものだと回答し、44%が週に数回、10人に1人以上が毎日ご褒美を自分に与えている。
中でもZ世代は際立っており、この世代の20%が毎日ご褒美を買い、40%超がご褒美のためのお金をあらかじめ確保していると回答している。多くの人にとって、こうした楽しみは贅沢をするということではなく、厳しい経済状況の中で生き残るためのものだ。加えて、Z世代の53%が休暇や家の購入など大きな出費は無理に思えるために小さなご褒美を買うと答えている。
厳しい経済状況下こその「ご褒美文化」
こうしたちょっとした散財は何も考えていない支出ではない。日課の中に意図的に織り込まれ、報酬、モチベーションを上げるもの、あるいはストレスを発散させるものとみなされていることが多い。
米ピュー・リサーチセンターが今年行った調査によると、米国人は経済に対して広く悲観的な見方をしている。現在の経済状況を「素晴らしい」または「良い」と評価したのはわずか23%だった。3分の1以上(34%)が「景気は悪い」と回答した。
この調査では、コストの上昇が依然として最大の重しとなっていることが強調されており、成人の3分の2が食料品や消費財の価格や住宅費を非常に心配していると回答している。
こうした状況からZ世代は持ち家や経済の安定、ストレスのない休暇といった大きな夢に手が届かないと感じるときに、「少なくとも今はいい気分でいられる」という考え方に傾いている。
この調査のデータが重要な意味を持つのは、Z世代や若年層の消費者が経済的な安定を感じていなくても、ささやかで目先の快適さを求めるようになった理由を表しているからだ。
「小さなご褒美文化」の台頭は、Z世代が日々どのように対処し、日常にどんな意味を見出しているかを明らかにしている。これまでの世代とは異なる行動に出ているというこの変化の背景にある3つの心理的要因を紹介しよう。



