フォーブスが毎年発表する米国長者番付「フォーブス400」は、米国で最も裕福な人物を示す代表的な指標だ。その首位を4年連続で守るのがイーロン・マスクであり、テスラやスペースXなどの企業価値の乱高下にもかかわらず、資産規模は史上初めて4000億ドル(約59兆円。1ドル=147円)を超えた。米国社会ではマスクを「富豪の象徴」とする向きもあり、今年のランキングはその地位を改めて裏付けている。
資産約63兆円で4年連続首位──テスラ株高騰とトランプ前大統領との関係が後押し
イーロン・マスクはこの1年で、トランプ大統領の選挙運動を支援し、新設された政府効率化省(DOGE)を率いた。しかし短期間でその職を去るなど、浮き沈みを繰り返した。彼は、世間が予想した通りトランプと仲違いした後に、自身の政党を立ち上げると脅したりもした。
マスクが首位に立つのは4年連続であり、その間にもいくつか記録を打ち立てた。彼はこの1年で資産を1840億ドル(約27兆円)増やし、年間資産増加額の記録を更新した。過去の最高記録は2020年から2021年にかけての1220億ドル(約18兆円)の増加である。さらに今年の「フォーブス400」で、史上初めて資産が4000億ドル(約59兆円)を超える人物となり、推定資産は4280億ドル(約63兆円)とされた(本ランキングでは2025年9月1日時点の株価を基準としている)。
マスクはまた、競争相手を大きく引き離した。オラクル共同創業者のラリー・エリソン(2位、推定資産2760億ドル[約41兆円])とメタ共同創業者のマーク・ザッカーバーグ(3位、同2530億ドル[約37兆円])は、いずれもマスクに1500億ドル(約22兆円)以上の差をつけられており、その額はウォーレン・バフェット(9位)の資産全体に匹敵する。マスクの主要な持ち株はいずれもこの1年で価値を増しており、その背景には、テスラ株に熱狂する投資家からビリオネアのベンチャーキャピタル(VC)、中東の政府系ファンドに至るまで、幅広い投資家が資金を投じたことが挙げられる。
テスラ株は販売減と失敗の中でも56%上昇
マスクの最大かつ唯一の上場資産であるテスラ株は、昨年のランキング以降で56%上昇した。同社の2025年上半期の販売台数は前年同期比13%減少し、今夏のオースティンの試験プログラムで大々的に宣伝されたロボタクシー事業も頓挫したが、それでも株価は上昇した。
テスラ株のここ1年の上昇の大半は2024年に生じ、昨年9月から12月17日のピークにかけて株価は2倍以上となった。この急騰は、大統領選に勝利したトランプとマスクの関係に対する投資家の期待に支えられた。しかしその後、同社株は約25%下落した。



