XとxAIの合併で評価額拡大、次回調達では約29兆円の評価額を狙う
マスクのテスラへの集中力をさらに奪っている大きな要因が、未公開市場の巧妙な金融スキームの産物であるxAIホールディングスだ。トランプが再選を果たし、マスクの指揮下で広告主が離れていたX(旧ツイッター)に広告主が戻ると、マスクは今年3月、同社をより評価額が大きい人工知能(AI)スタートアップのxAIと合併させた。このときXの評価額は、負債を差し引いて330億ドル(約5兆円)と算定された。これはマスクが主導し、投資家が承認した条件に基づくもので、2022年の買収額を20億ドル(約2940億円)上回っている。一方、xAIの評価額は、事情に詳しい投資家やフォーブスがミューチュアルファンドの開示を分析した結果によると、従来の500億ドル(約7兆円)から800億ドル(約12兆円)に引き上げられた。
この2企業におけるマスクの持ち分価値は、合計で推定600億ドル(約9兆円)に達する。マスクはそれに留まらず、次の資金調達ラウンドで2000億ドル(約29兆円)超の評価額を目指していると報じられている。
競合OpenAIへの攻撃を継続、約14兆円の買収提案から訴訟合戦へ発展
マスクはまた、主な競争相手であるChatGPTの開発元OpenAIへの攻撃も続けている。今年2月、マスク主導の投資家グループはOpenAIに974億ドル(約14兆円)で買収提案を行った(同社は売りに出されておらず、この試みは当然失敗した)。また、その後はOpenAIとその共同創業者でCEOのサム・アルトマンを相手取り、同社が非営利組織の設立契約に違反して営利企業化を図っていると訴えた。
しかしマスクは、州裁判所が訴えを棄却するかどうかを判断する前に訴えを取り下げ、代わりに連邦裁判所で同様の訴訟を起こした。これに対しOpenAI側は、マスクが「長年にわたる嫌がらせキャンペーン」を仕掛けているとして逆提訴し、買収提案は損害を与えるための「見せかけの入札」だったと主張している。さらに8月にマスクは別の訴訟を起こし、OpenAIとアップルが結託してアプリストアを操作し、xAIのチャットボット「Grok」よりもChatGPTを優遇したと主張した。アップルとOpenAIはいずれもマスクの主張を否定している。


