約14兆円の株式報酬めぐる訴訟──デラウェア州裁判所の判断がマスクの資産を左右
それでもマスクのテスラの持ち分はさらに拡大する可能性がある。彼は今、2018年にテスラ取締役会から付与された、現在の株価で940億ドル(約14兆円)相当の株式オプションを保持できるかどうかについて、デラウェア州最高裁判所の判断を待っている状態だ。フォーブスはこの訴訟の最終的な決着を見極めるまで、2024年1月以降、このオプションの価値を50%割り引いて彼の資産に算入している。
デラウェア州の裁判官はすでに2度、この報酬パッケージを無効と判断し、取締役会がマスクに過度に配慮していたと結論づけた。マスクの控訴審の口頭弁論は10月に予定されている。もし今回も不利な判断が下れば、代わりにマスクは、8月にテスラの特別報酬委員会が決議した290億ドル(約4兆円)相当の株式を受け取ることになる。
さらに取締役会は最大約147兆円の報酬案を提示、テスラへの集中を促す狙い
さらにテスラ取締役会は9月、新たな成果連動型の株式報酬パッケージを提案した。この新たな報酬案が承認されれば、マスクは巨額の株式報酬を得る可能性がある。今後10年間で“時価総額を現状の8倍以上となる8.5兆ドル(約1250兆円)に拡大する”といった野心的な目標を達成した場合、その額は最大で1兆ドル(約147兆円)近くに達するという。取締役会はこの提案が「イーロンの時間、エネルギー、そして並外れた才能をテスラに集中させるために設計されたものだ」と説明している。
テスラに次ぐ資産の柱スペースX、評価額は約59兆円へ倍増し政府との契約も維持
マスクのテスラへの集中力を削ぐ要因の1つはスペースXだ。同社の評価額は4000億ドル(約59兆円)に達し、1年前の2100億ドル(約31兆円)から倍近くに増えた。この評価は、直近で行われた10億ドル(約1470億円)規模の株式公開買付(TOB)や、セカンダリーマーケットの取引データに基づくものだ。2002年にマスクが設立したスペースXは、時価総額5000億ドル(約74兆円)のOpenAIに次いで、世界で2番目に評価額の大きい未上場企業となっている。マスクの持ち分は推定42%で、1680億ドル(約25兆円)相当と見積もられる。
同社のインターネット通信事業「スターリンク」は、軌道上に6800基の衛星を展開し、600万人の顧客に接続を提供している。モルガン・スタンレーの試算によれば、スターリンクは昨年93億ドル(約1.4兆円)の収益を上げたという。こうした事業と並行して、スペースXのロケットは、今夏にマスクがトランプと仲違いした後でさえ、米政府にとって人工衛星などの打ち上げを委託する主要な委託先であり続けている。ウォール・ストリート・ジャーナルは7月、ホワイトハウス当局者が一時、スペースXのNASAや国防総省との契約の一部を取り消すことを検討したと報じた(ホワイトハウスは、大規模な政府契約を持つ複数の企業を精査したと説明している)。


