U2のボーカル、ボノが「フェイスブックへの投資により世界一リッチなポップスターになった」。そう報じる記事が今週、ネットをかけめぐった。
マーク・ザッカーバーグ率いるフェイスクブックは、共同創業者のショーン・パーカーやダスティン・モスコヴィッツの出資者にビリオネアの地位をもたらしてきた。しかしボノはその一員ではない。少なくとも現時点において、ボノの純資産はビリオネアの定義である10億ドル(約1203億円)に届いていない。
フォーブスの推計では、ミュージシャンや俳優を本業とするビリオネアはいまだ存在しない。ボノはもとより、ミュージシャン長者番付の常連であるショーン・コムズ(純資産7億5,000万ドル=約902億円)、ドクター・ドレ(同7億ドル=約842億円)、マドンナ(同5億5,500万ドル=約662億円)、ビヨンセ(同2億5,000万ドル=約301億円)らもビリオネアではないのだ。
今回の報道の発端は、イギリスのタブロイド「ザ・サン」がボノの所有するフェイスブック株の比率を誤って伝えたことにある。その記事内容を多数のニュースサイトが転載。「ザ・ミラー」は、ボノは「2009年、共同設立したElevation Partnersを通じてフェイスブック全株式の2.3%を取得した」と報じた。
実を言えば、ボノはプライベート・エクイティ・ファンドElevation Partnersの5人のマネージング・ディレクターの一人であり、同ファンドが保有する株のごく一部を持っているに過ぎない。
Elevation Partnersは2009年と2010年の2度にわたって計2億1000万ドル(約252億7,000万円)をフェイスブックに投資し、約2%の株を取得したと言われている。それによって得た利益はボノを含むマネージング・ディレクターとその他の投資家に分配されているはずだ。
しかし、Elevation Partnersが今もフェイスブック株を保有しているかどうかは明らかにされていない。部分的に、あるいはまるごと売却した可能性もある。
ボノの資産に関する誤報は今回が初めてではない。2012年にフェイスブックが上場した際にも、Elevation Partnersの保有株をボノ個人のシェアと混同したニュースが流れた。
ボノは当時、NBSの取材に対し「僕はビリオネアではないし、ビートルズの誰よりも金持ちじゃない。(ビリオネア報道は)ジョークだ。Elevationでは人から預かったお金を基金やペンションファンドに投資している」と答えている。
ビリオネアではないとはいえ、ボノが世界で最も稼ぐミュージシャンの一人であることは確かだ。フォーブスの調査では、ボノのバンドU2は好調なツアー収入に支えられ、この10年間で5億ドル(約601億6,000万円)近く稼いでいる。
コンサートツアー史上最高の興行収入を記録した2011年の「360°」ツアーの頃は、12ヶ月間で1億9500万ドル(約234億6,000万円)を稼ぎ、同期間に最も稼いだミュージシャン首位に躍り出た。現在開催中の欧米ツアー「Innocence + Experience」も期間こそ短いが、莫大な収益を上げると見られている。既に終了した北米ツアーでは、1公演あたり平均210万ドル(約2億5,270万円)を稼いだ。
なお、Elevation Partnersは2005年以降、新たな資金調達をしておらず、活発な投資活動を行っていない。同社は2006年、フォーブスの発行元Forbes Mediaの株の45%を取得した。だがForbes Mediaは2014年に買収されたため、現在は株主ではない。