日本の兼松と米Intuition Robotics(インテュイション・ロボティクス。以下IR)は9月9日、IRのAIコンパニオンロボ「ElliQ(エリキュー)」の日本市場向け版を共同開発すると発表した。ElliQは高齢者の感情面をサポートし、認知機能の刺激、健康・ウェルネス面での支援を提供する。また兼松はIRが実施する第三者割当増資を引き受け、同社株式を取得。これにより、IRが調達した累計資本は8500万ドル(約125億円)に達した。
積極的に会話を始める「ElliQ」――9年間の研究で誕生した高齢者を支える存在
チャットボットの急速な普及や利用の拡大は、これらのツールが人々の精神面の健康に役立つのか、あるいは有害となるのかを問いかけている。ノースカロライナ州のイーロン大学の今年の調査によれば、米国の成人の52%がChatGPTのようなチャットボットを利用したことがあり、38%が人間と深い関係を築けると考えている。
カリフォルニア州パロアルト拠点のIntuition Roboticsは過去9年間にわたり、AIが高齢者の健康やウェルネスをどのように支援できるかを検証してきた。その成果として開発されたのがElliQだ。この小型ロボットは、意図的に人間の顔を持たないデザインになっており、ユーザーがだまされたと感じないようにしている。一般的なチャットボットがユーザーからのテキストや音声の入力に応答するのとは異なり、ElliQは自ら積極的に会話を始めてその内容を記憶し、日常的な活動への参加を促すことで、ユーザーの心身を刺激する。
利用者の9割以上が孤独感の軽減や生活の質の向上を報告
Intuition Roboticsはまた、米国の政府機関や医療団体との連携を通じて、ElliQと利用者との交流について豊富な知見と実証データを蓄積してきた。利用者の97%が健康とウェルネス全般の改善を実感し、94%が孤独感の軽減を報告している。さらに85%が「外の世界とのつながりを強めた」と感じ、90%が生活の質の向上を報告した。
ElliQはユーザーとのやり取りの60%を自発的に開始し、会話を持ちかけ、活動を提案し、服薬リマインダーを適切なタイミングで通知し、利用者と共に具体的な目標を設定する。このロボットの利用継続率は高く、導入から2年経過した利用者は、1日平均40回もやり取りしている。Wired誌の最近のレビューでは「気楽な話し相手」であり「明るく励まし、共感を持って耳を傾けてくれる存在」と評された。



