こうした地殻変動が進む中、米国の大学は世界的なランキングで下降傾向を見せ始めている。
英教育専門誌タイムズ・ハイヤーエデュケーション(THE)による今年の世界大学ランキングの調査で、教育と研究で卓越していると思われる大学を最大15校まで挙げるよう世界中の学者に求めたところ、米国の大学の名が挙がった割合は38%にとどまった。この割合は、10年前の2015年には46%だった。
一方、中国の大学の評価は同じ期間に2%から7%へと高まり、THEが学者からの評判を基に格付けしたランキングでは、清華大学が8位、北京大学が11位となり、上位15校に2校がランクインした。これら中国の大学の中には、トランプ政権による就学ビザの締め付けの影響を受けた外国人留学生を意図的に募集し、ハーバード大学をはじめとする米国の一流大学から人材を引き抜いているところもある。これは、国際政治における中国の台頭に対する懸念が広がる中で起きている現実だ。
他方で、こうした懸念にもかかわらず、米国は依然として世界の大学ランキングを支配している。今年のTHEによる世界大学ランキングでは、米国からマサチューセッツ工科大学(MIT)、ハーバード大学、プリンストン大学、スタンフォード大学、カリフォルニア工科大学、カリフォルニア大学バークレー校、エール大学の7校がトップ10に入った。
同様に、米誌USニュースの世界大学ランキングでも、ハーバード大学、MIT、スタンフォード大学、カリフォルニア大学バークレー校、ワシントン大学、エール大学、コロンビア大学の7校がトップ10に入った。今後、米国で学ぶ外国人留学生は減少するとみられているが、同国の大学は当面、世界中の優秀な学生にとって依然として魅力的な留学先であり続けるだろう。
米国の高等教育機関は岐路に立たされている。同国の大学の評判は、政策立案者が引き続き高等教育の改革に注力するのか、あるいは焦点を他の場所に移すのかによって決まるだろう。今年度中の留学生の入学状況や連邦政府の予算、大学教員の終身在職権に関する法律の動向は、今後数年間に何が期待できるかを示す重要な指標となる。
米国が世界の高等教育で主導権を握り続けるのか、その地位を他国に譲るのかは、今年度中になされる選択によってある程度決まるものとみられる。


