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2025.09.13 18:00

「沈黙」は言葉に勝ることも──心理学者が解説、恋愛関係にもたらす「4つの利点」

zoranm / Getty Images

1. 沈黙は大きな存在感となり得る

沈黙は注意を払わないことではない。実際、よく見ると沈黙は最も純粋な形であることもある。あなたのパートナーが急いで言葉を紡ごうとすることなくあなたの横に座っているとき、それは完全な一体感を持った存在感を提供する方法であることが多い。このような寄り添いは、注意散漫が日常茶飯事となっている、刺激が多すぎるこの世界ではほぼ見当たらなくなっている。

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2023年の研究では、なぜ沈黙がこれほど力強く感じられるのかが明らかにされている。研究者たちは「えー」や「あのー」といった間を埋めるつなぎ言葉が、会話を続けるシグナルとして機能することを発見したが、その効果は私たちが思うより弱い。それは部分的には、ボディランゲージやトーンといった他の手がかりの方が往々にしてより多くのことを伝えるからだという。重要なのはつなぎの言葉そのものではなく、その背後にある注意の質だ。

つなぎには2通りある。会話の空白をカバーするために使われる神経質なつなぎ言葉は緊張を伝えるだけだが、落ち着いた沈黙は安全を伝える。この2つでは相手の感じ方は大きく異なる。例えば、神経質なおしゃべりでは、話についていかなければならないというプレッシャーを感じる。静かな寄り添いでは、休むよう誘われているように感じる。

また、私たちの神経系は言葉だけでなく「静寂の共有」によっても調節されていることが多くの神経科学研究で示されている。言葉を発することなく信頼できる人と一緒に座ると、どんなに慎重に選ばれた安心させる言葉よりも深く心が癒やされる。

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沈黙は存在感と組み合わさったとき、「この沈黙をどうにかする必要はない。ただ、あなたと一緒にいる必要がある」とのメッセージを発する。

2. 沈黙は気持ちを落ち着ける環境を作る

思いやりのある言葉も含めて、言葉は時に邪魔になる。言葉があると、相手と一緒に座る必要があるという気持ちが急に失われる。それとは対照的に、沈黙は保護する空間のような役割を果たし、感情に向き合い、呼吸を整え、やがてタイミングを見計らって自分で自分を落ち着けることができる。

入院後の周囲の人からの支援に関する研究はこの作用を明確に示している。患者は頻繁な電話やお節介のアドバイス、過剰な感情表現などの善意の行動に対して慰めを感じるよりも圧倒されることが多いことが示された。周囲の「支えよう」とする行為そのものが時に、自身の感情を処理し、自律性を発揮する機会を患者から奪っていた。

それは日常の人間関係でも変わらない。泣いているときに「元気を出して」「明るい面に目を向けて」と言われることを考えてみるといい。そうした言葉は善意からくるものかもしれないが、あなたから感情を処理するプロセスを奪ってしまう。

また、泣いているあなたの横に誰かがただ座って、押しつけることなく寄り添ってくれるところを想像してほしい。あなたに手を置いてくれるかもしれないし、そうしないかもしれないが、邪魔されることなくあなたが気持ちを処理できるようにする。相手のその静かな自制は「あなたの強さを信じている。気持ちが落ち着くまで側にいる。きっと落ち着くから」というメッセージを発する。

セラピーでは「沈黙が部屋を満たす」と言われる。人間関係においても、沈黙は心を満たすことができる。沈黙は、気持ちが急かされたり、修正されたり、抑制されたり、あるいは否定されたりすることのない空間を作り出す。沈黙の中では、感情が自然に展開することが許される。受動的であるどころか、沈黙はあなたの内面が誰かの意図によって変えられてしまうのを防ぐ、深い敬意を表す行為だ。

次ページ > 3. 沈黙は愛をただ説明するのではなく感じさせる

翻訳=溝口慈子

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