北米

2025.09.11 09:00

米生産者物価は予想外の下落に、トランプ大統領は「インフレなし!」と称賛

Bruce Bennett/Getty Images

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市場は8月の生産者物価が上昇すると見込んでいたものの、労働統計局が米国時間9月10日に発表したデータは、その予想に反して下落した。連邦準備制度理事会(FRB)が金利の引き下げを検討するなか、その最後の検討材料となる消費者物価指数は今週後半に発表される予定だ。

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生産者物価指数(PPI、複数の財やサービスのコストを測定する指標)は、7月から8月にかけて0.1%下落したと労働統計局は報告した。FactSetがまとめた市場予測は0.4%の上昇だった。

この下落は、4月のPPIが0.3%下落して以来、初めてのものだ。

コメリカ銀行のチーフエコノミスト、ビル・アダムスは10日のノートでこの下落についてコメントし、卸売業者や小売業者が「関税コストを消費者に転嫁するのに慎重である」と指摘した。アダムスによれば、その背景には、市場シェアを維持するための仕入れ先の値引き、米国内の需要の弱さ、あるいは企業が「関税率がどこで落ち着くのかが明確になるまで」転嫁を先延ばししていることなどが考えられるという。

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ヘッドラインPPIは2.6%の上昇となり、市場予測(3.3%の上昇)や7月の3.1%の上昇を大きく下回った。また、食料品とエネルギー価格を除いたコアPPIも、0.3%の上昇との市場予測に対し、0.1%の下落となった。

労働統計局によれば、8月のヘッドラインPPIの上昇は、主にたばこ製品価格が2.3%上昇したことに牽引された。さらに、ポートフォリオ管理コストが2%、コーヒー価格が6.9%上昇した。

消費者物価指数(CPI)データは11日に労働統計局から発表される予定で、FactSetがまとめた市場予測では、前月の2.7%の上昇に対し、8月には2.9%の上昇になるとされている。この報告は、9月17日の次回FOMCの前に発表される、最後の判断材料となる。これが予想を下回るインフレとなれば、昨年12月以降4.25%から4.5%のレンジで据え置かれている政策金利が引き下げられる可能性が高まるとみられる。ただし、すでに投資家はそれを織り込んでおり、CMEグループのFedWatchツールによれば、その可能性は100%とされている。

ドナルド・トランプ大統領はこのPPI報告を称賛し、「速報:インフレなし!」と述べ、FRBとジェローム・パウエル議長に対して利下げを求めた。

卸売物価の下落の報告は、労働市場の悪化を示す最近の失業率や雇用データに続くものである。労働統計局は先週、8月の失業率が4.3%に上昇したと報告した。これは市場予測を上回るもので、同局が先月、データ操作疑惑を受けたエリカ・マクエンタファーが解任されて以来、初めての報告であった。

雇用統計によれば、米国では失業者が720万人と、求人件数の718万件をわずかに上回った。これは2021年4月以来初めての現象である。ADPのチーフエコノミスト、ネラ・リチャードソンは、労働市場は「不確実性によって翻弄されている」と警告した。

さらに今週、労働統計局は2025年3月までの12カ月間で、新規雇用者数が当初の報告より91万1000人少なく、期間中の合計は約84万9000人だったと発表した。この下方修正に対してホワイトハウスやJ・D・ヴァンス副大統領は批判を表明し、ヴァンスは「労働統計局のデータがどれほど役に立たなくなっているか、言葉では言い表せない」と書き込む一方で、この修正は「同局への信頼回復につながるべきだ」と述べた。

forbes.com原文

翻訳=江津拓哉

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