宇宙

2025.09.11 10:30

地球の「隠れた準衛星」発見、60年間寄り添って公転しながら見つからず

Shutterstock.com

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1960年代から地球に寄り添う軌道で太陽を周回していながら、これまで発見されることのなかった準衛星が新たに見つかった。「2025 PN7」と命名されたこの天体は、今年8月2日に初めて観測された。その後、各地の天文台が保有するアーカイブ画像にも存在が確認され、約60年前から現在の軌道上にあり、さらに今後60年間は軌道上に留まるだろうことが示唆されている。地球への脅威となることはないので、安心してほしい。

どこにある?

2025 PN7は直径15~30mほどの地球近傍小惑星(NEA)で、地球とよく似た太陽公転軌道を持つ小惑星グループ「アルジュナ群」に分類される。先週、米国天文学会(AAS)の学術誌Research Notes of the AASに掲載された研究論文で、初めてその発見が発表された。

天文情報サイトのSky&Telescopeによれば、天文画像アーカイブ調査では2014年まで遡って存在を確認できた。軌道モデルから、1960年代以降ずっと安定した軌道を保っていることが示唆され、さらに今後60年間はこの軌道を維持すると予測されている。

2025 PN7は現在、南天の星座・みなみのうお座(編集部注:「秋のひとつ星」こと1等星フォーマルハウトが有名)に位置している。地球からの距離は最も近くて約450万km、最も遠い時は約6000万km離れた場所を公転している。

「準衛星」とは何か?

地球の周りを公転する恒久的な天然衛星は、1つしかない。一方、実際には太陽を周回しているにもかかわらず、地球を回っているように見える小天体が複数見つかっている。

これらは準衛星(擬似衛星)と呼ばれ、中心天体を公転する2つの天体が互いに重力を及ぼし合う「軌道共鳴」という現象によって、あたかも地球の伴星のように見えるのだ。2025 PN7もこの種の天体で、地球と1対1の共鳴で同期して動くため、太陽を公転しているのに地球を周回しているように見える。

地球の準衛星「2002 AA29」の軌道を示した図。太陽から見ると地球とほぼ同一の軌道を描く天体だが、地球から見ると地球を公転する衛星のように見える(JPL/NEO, Daniel Arnold (JPG/PNG versions), Michał Połtyn (SVG versions), Public domain, via Wikimedia Commons)
地球の準衛星「2002 AA29」の軌道を示した図。太陽から見ると(左)地球とほぼ同一の軌道を描く天体だが、地球から見ると(右)地球を公転する衛星のように見える(JPL/NEO, Daniel Arnold (JPG/PNG versions), Michał Połtyn (SVG versions), Public domain, via Wikimedia Commons)
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翻訳・編集=荻原藤緒

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