ファッション

2025.09.25 16:15

ブルネロ・クチネリ氏が考える 時代とともに変化する「価値観」と「服」

色鮮やかなワン&ハーフ・ブレストジャケットにフェードしたジーンズ、スニーカーという若々しい装いでくつろぐブルネロ・クチネリ氏。新鮮な印象だが、ブランドのトレードマークでもあるグレーのソリッドタイは忘れない。あくまで自分らしく変化を取り入れる、お手本のようなスタイルだ。
色鮮やかなワン&ハーフ・ブレストジャケットにフェードしたジーンズ、スニーカーという若々しい装いでくつろぐブルネロ・クチネリ氏。新鮮な印象だが、ブランドのトレードマークでもあるグレーのソリッドタイは忘れない。あくまで自分らしく変化を取り入れる、お手本のようなスタイルだ。

「私たちが信じているのは、穏やかで整ったエレガンスです。それは他者への敬意に満ち、魂の優しさを体現するもの。だからこそ、私たちは服の素材と仕立てが語ってくれることを大切にしています。服を着用した際の感覚こそが、私たちのスタイルの本質を着用者へ伝えてくれると信じているのです。

advertisement

そして他者への親切心こそが、私たちにとっての本質のひとつであり、最も基本的な価値観です。私は人生でいちばん大切なのは、“善良な人間であること”だと信じています。他者の話に耳を傾け、微笑みや優しい手を差し伸べる。そうした思いやりや優しさは、魂から生まれるエレガンスであり、他者と分かち合うことで初めて意味をもちます。それこそが私たちのインスピレーションの源であり、未来を担う若い世代にこそ受け継いでもらいたいと願う、大切な価値観なのです」

ブルネロ クチネリの服は、最高峰の素材と仕立てが生み出す、快適な着心地で着用者を包み込む。すると着用者は心に余裕が生まれ、他者にもおのずと優しい気持ちになれる。そしてその優しさは、周囲にも広がっていくのである。そんな人間としての優しさや親切心、誠実さを表現するものこそが、氏の追求するエレガンスであり、同氏が服を通して次世代へ伝えたい普遍的価値観なのである。

現代人こそ省みるべき 人生の核となる価値観

「ピタゴラスが著した『黄金の詩』には、〈一日の終わりに自らを省みなさい。“何を誤ったか? どんな義務を果たし損ねたか? と”〉という一節があります。

advertisement

私はこの言葉こそが、人生の核であると思っています。毎日、誠実な人間であることを示すこと。思いやりと優しさをもち、周囲に敬意を払い、森羅万象と調和して生きること。

そういったことこそが、私たち人間にとっては大切なのです」

変化が激しい現代は、とかく自分を見失いがちだ。それは自身のファッションスタイルにもいえる。そんな時代だからこそ日々自らを省み、周囲との調和を重んじる。それが変化する時代において、自分らしい良き人生と良き装いを楽しむ秘訣なのだ。


ブルネロ クチネリ ジャパン
03-5276-8300
www.brunellocucinelli.com


ブルネロ・クチネリ◎1953年生まれ。イタリア・ウンブリア州ペルージャ出身。1978年、カシミアニットを主軸とした会社を設立し、カラフルに染め上げた女性用のカシミアニットが成功の足がかりとなる。1982年に妻の出身地のソロメオ村へ移住し、3年後に古城を買い取り本社とする。以後、中世から続く村を含む地域の復興にも取り組む。2012年、ミラノ証券取引所に上場。その経営哲学「人間主義的経営」により、イタリア国内外から数多くの勲章や権威ある賞を受けている。

direction by Akira Shimada | text by Yasuhiro Takeishi | photographs by Massi Ninni

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事