──再編後、株価が上昇した。シナジーへの期待が大きいのか。
伊藤:インフラ事業が事業会社に切り出されて、投資家のみなさんが事業をピュアに評価できるようになったことが大きい。さらに成長戦略として、今お話しした広告事業とのシナジー、新規事業、そしてM&Aによる仲間づくりを打ち出している。既存事業の持続的成長を含めた4つの戦略の積み上げと相互シナジーが評価されているのではないか。
──新規事業として24年11月に生成AI向けクラウドサービスに100億円規模の投資を決定し、「GMO GPUクラウド」をスタートした。
伊藤:我々がAIをやるなら、やはりインフラだ。インターネットでも「俳優にはやり廃りはあるが、舞台は変わらない」という考えのもとにインフラを提供している。AIのサービスも波があると予想するが、AIのインフラ需要はそれと関係なく着実に伸びていく。
将来から見ると我々は先発組だが、短期では参入が1-2年遅れた。後発が同じことをしていたら追いつけない。差別化として、「GMO GPUクラウド」は性能にこだわった。NVIDIA推奨のネットワーク構成や機材で構築して、スーパーコンピュータ性能ランキング「TOP500」(24年11月版)で世界37位、国内6位に。国内で我々よりも上にいるのは「富岳」などの研究用。国内商用サービスとしては最速であることが証明された。
──自身はエンジニアではない。なぜこの世界に。
伊藤:大学卒業後に証券会社に勤めたが、古い慣習が自分には合わないと感じ、半年で辞めた。親に合わせる顔がなく、上京して正反対の仕事をしようと考えた。それで見つけたのが今の会社。当時のインターネット事業は20人ほどしかいないベンチャーだった。当初は熊谷に付いて新規プロジェクトをこなしていたが、35歳でインフラ事業の担当に。以降はインフラ中心にやってきた。
──リーダーとしてのこだわりは。
伊藤:競合比較でナンバーワンになることだ。競合が値下げを仕掛けてシェアが落ちたことがあった。目先の収益を追うなら値下げしないほうがいい。しかし、スペック比較が容易なインフラはナンバーワンであることが圧倒的に強い。一時的に収益を落としてでもナンバーワンを徹底しないと成長が止まる。インフラ担当になり、ひるむことなくナンバーワンを追求して、ドメイン、レンタルサーバー、プロバイダー事業に取り組んできた。
AI向けインフラは性能で1位になった。ただ、お客様が何をナンバーワンと評価するのかは、これから見極めなくてはいけない。その先にはこの領域でのナンバーワンがあると信じている。
いとう・ただし◎1997年、現GMOインターネットグループ入社。要職を歴任し、2025年1月の再編でGMOインターネット代表取締役社長執行役員。持ち株会社の取締役グループ副社長 執行役員 グループ代表補佐グループインフラ部門統括も現任。


