ビジネスコスト
このような動きは、「能力給の大幅アップを避けることで経費を節約する」という、短期的なコスト管理のように見える。
だが、真実はこうだ。人材の入れ替えは、常に報酬を与えるよりもコストがかかる。新しい人材を雇って訓練し、自社の文化に同化させるには時間がかかり、これらすべてにコストが伴う。
そしてこのような動きによって、スターバックスは金を失うだけではない。そうした環境では成長への道を切り開くことはできないため、最も頭の切れる社員を失う。スターバックスと同じような動きをし、すでに潰れた企業はたくさんある。
最近、家電量販店のサーキット・シティで買い物をした人はいるだろうか。おそらくいないだろう。営業担当者が商品の販売時に得られる報酬体系を、時給制に変えた直後に倒産したのだから。時給制を導入した結果、優秀な販売員たちは同社を離れ、最大の競合相手であるベスト・バイに移った。
リーダーへの教訓
「リーダーは最後に食べよ」という言葉を聞いたことがあるだろう。もしスターバックスのCEOが本気でコスト削減を考えているのなら、まず自分の給与と特典から始めるだろう。インフレにさえ追いついていない最低限の昇給しか与えず、自身の給与を調整しないことは、社員に「あなたの福祉(と富)は私の福祉よりも重要ではない」というはっきりしたメッセージを送ることになる。
雇用市場が好転した瞬間、スターバックスを辞める人の列は、空港でコーヒーを求める人の列よりも長いものになるだろう。
結論
スターバックスは今回の措置を、コスト削減のためと考えている。だが、実際は人材を流出させる行為だ。その理由は以下の通りだ。
・社員を困らせて会社は立ち行かない
・努力が認められなければ、人はやる気が起きない
・成長の原動力となる人材の士気をくじくと企業は、成長しない
スターバックスはコーヒーの問題を抱えているのではない。リーダーシップに問題がある。それが変わらない限り、本当に流出するのは顧客ではない。社員だ。


