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2025.09.16 08:15

寝室のCO2濃度が生産性を左右 適切な換気量とは

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寝室の二酸化炭素濃度が増すと睡眠の質が大きく低下する。それを安全な濃度に抑えるには、現行の住宅換気基準の少なくとも2倍の換気量が必要となるという。

寝室の二酸化炭素濃度が睡眠に影響することは以前から知られていた。起きたときの部屋の二酸化炭素濃度が高いと、眠気や集中力の低下が生じるとのことだ。これに関して数多くの研究がされてきたが、条件がまちまちであるためこれまで統一的な結論が得られずにきた。そこで早稲田大とデンマーク工科大学による国際研究チームは、2020年1月から2024年8月までに発表された寝室の換気状況と睡眠の質に関する17本の論文の内容を分析した。

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それにより、ある研究から、脳波計や腕時計型睡眠計で測定された睡眠の質が有意に低下したもっとも低い二酸化炭素濃度は約1000ppmだと推定できた。またそれを850ppmだとする研究もあった。そこで研究チームは計測器の誤差などを考慮し、安全な基準として800ppm以下を暫定的な目標水準とした。

人は、起きているときよりは少ないものの、寝ている間も呼吸によって二酸化炭素を吐き続ける。密室ならば酸素が減り二酸化炭素濃度はどんどん高くなるため、換気はどうしても必要だ。分析により、寝室の二酸化炭素濃度を800ppm以下に保つには、1人あたり8リットル毎秒の外気供給が必要になると推定された(外気の二酸化炭素濃度は420ppmとする)。

横軸が二酸化炭素濃度の目標値。棒グラフの色は睡眠中の二酸化炭素産生量。白は高齢者(9リットル毎時)、薄いグレーは子ども(10リットル毎時)、濃いグレーは成人(11リットル毎時)、黒は眠りの浅い人またはとくに代謝の多い人(15リットル毎時)。800ppmに抑えるなら、成人1人につき外気供給量は8リットル毎秒となる。
横軸が二酸化炭素濃度の目標値。棒グラフの色は睡眠中の二酸化炭素産生量。白は高齢者(9リットル毎時)、薄いグレーは子ども(10リットル毎時)、濃いグレーは成人(11リットル毎時)、黒は眠りの浅い人またはとくに代謝の多い人(15リットル毎時)。800ppmに抑えるなら、成人1人につき外気供給量は8リットル毎秒となる。

これは、床面積10平方メートル、天井高2.5メートルの寝室に1人で寝ている場合は1時間に1回、2人なら30分に1回、部屋の空気をすべて入れ換える量に相当する。現在の住宅は、建築基準法により1時間に室内の空気の半分以上を入れ替えることができる24時間換気システムの設置が義務づけられているが、研究チームが提唱する換気量はその2倍以上となる。

現在の住宅の換気基準は、シックハウス対策、結露防止、感染症対策に重点が置かれている。二酸化炭素と睡眠の関係についても議論に加えるべきだと研究チームは提言している。寒い冬の夜や熱帯夜に大量の換気をしなければならないとなれば、それに応じた冷暖房の工夫も必要になるだろう。積極的な議論が望まれる。

プレスリリース

文 = 金井哲夫

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