AI

2025.09.12 11:00

MIT報告書が「AIは失敗している」と指摘、だが測定方法が間違っているとしたら?

MIT(Shutterstock)

経営幹部のAI測定における死角

イノベーション測定の難しさは、時代遅れの指標によってさらに悪化している。多くのリーダーは、AIの進捗を、立ち上げたパイロットプロジェクトの数、契約しているベンダーの数、あるいは顧客に提供した「AI搭載」機能の量で追跡する。成功がチームや部署レベルでのプロセス改善、あるいはバックオフィス業務における退屈な作業の削減と結びつけて考えられることは稀である。

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MITの報告書もこの死角を示唆している。最も成功した投資対効果(ROI)は、派手な顧客向けアプリケーションではなく、価値の低いアウトソーシングの排除、ワークフローの引き継ぎの効率化、あるいは単に個々の従業員の業務をより速く、より効果的にするといった、ありふれた管理業務の自動化といった分野に見られたのだ。しかし、これらの変化は標準的な損益計算の枠組みでは捉えにくく、株主向けの事業報告書で称賛されることもほとんどない。

この測定の見落としには、文化的な側面もある。「シャドーAI」の利用は、上層部から許可されたものではない。それは、従業員が変化する仕事の現実に備えて、静かに自らを武装する行為である。多くのナレッジワーカーは、上司に知られることなく日常的にAIツールを使用している。実際、一部の企業はデータプライバシーや正式なガバナンスの欠如を懸念し、こうした実験的な試みを抑制している。しかし、歴史上最も影響力のあったテクノロジーシフトのいくつかは、このようにして始まってきた。スプレッドシートからスマートフォンに至るまで、より広範な組織の進化を促したのは、しばしば現場の従業員による「ただ仕事をやり遂げる」という行為だったのだ。

これは、クラウド導入がどのように始まったかに匹敵する。それはCIO(最高情報責任者)の指示からではなく、調達プロセスが遅すぎるという理由で、エンジニアリングチームが自分たちのクレジットカードでAWS(アマゾン・ウェブ・サービス)を使い始めたことから始まった。今日のAI革命も同じパターンをたどっている。Stellar IT SolutionsのCEOであるジョシュア・サーカスは、メールインタビューで次のように語った。「企業のリーダーシップがAIの使用を(監視付きで)奨励または抑制する措置を取らなければ、『ワイルド・ワイルド・ウェスト』(かつての西部無法地帯)のような事となるリスクを負うでしょう」。

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最も先進的な組織は、AIの探求を奨励しつつ、ハルシネーション(AIの誤情報生成)や誤用に対する安全策(ガードレール)を設けるという、中間的なアプローチを見いだしている。しかし、サーカスが指摘するように、「それを奨励するのは起業家的ですが、すべての企業が起業家を求めているわけではありません」。このイノベーションと管理統制の間の緊張関係こそが、多くの組織で従来のROI測定がAIの真の価値を見逃してしまう理由なのである。

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翻訳=酒匂寛

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