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2025.09.14 11:30

アクティビストの新潮流と企業統治の力学

Andrew Krasovitckii/ Shutterstock.com

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アクティビストファンドの参入が加速し外国人投資家の存在感が高まるなか、企業統治の関心は、株主とアクティビストの関係性に強く向かい始めている。いま起きているその力学は何をもたらすのか。


アイ・アールジャパンホールディングスによると、日本に参入しているアクティビストファンド数は73(2025年5月12日時点)と過去最高になり、三菱UFJ信託銀行の集計では、6月総会のアクティビストの株主提案は137議案と過去最高になった。

例年、アクティビストの株主提案が成立するのは1~2件であり、2024年はストラテジックキャピタルによるダイドーリミテッドへの提案のみだった。ストラテジックキャピタルはダイドーリミテッドに取締役を送り込んだ後、株価が急騰したため、保有株を売却したことで短期志向との批判を浴びた。同社の丸木強代表によると、株価が急騰すれば、資金の出し手であるアセットオーナーのために、利益を獲得するのはアセット・マネージャーの責務ということだった。また、同社はワキタに対して5年連続で株主提案を行って否決されたが、同じ企業に対して毎年粘り強く提案することで会社が部分的に変わり、株価上昇を期待する面があるようだ。加えて、親子上場の解消を目指す投資も多く、今年の株主総会では日本製鉄とその上場子会社の大阪製鐵に株主提案したが、東証が4月に流通株式の定義を見直したため、親子上場解消を目指す取引はやりにくくなった面がある。

今年の株主総会は6月27日が開催ピークだったため、執筆時の我々の調査では、これまでアクティビストの株主提案の成立が判明したのはホギメディカル、栄研化学、東京コスモス電機である。ホギメディカルではダルトンが提案した同ファンド共同創業者のローゼンワルド氏の取締役選任議案が52.1%の賛成率で成立した。会社側は同氏の取締役選任に反対意見を表明していたが、可決後は「経営監督の一層の強化に尽力してもらえると期待している」と述べた。ホギメディカルのダルトン(Nippon Active Value Fund等との共同保有)の保有比率は26.4%だったが、外国人保有比率が57.6%に達していたうえ、同社の過去5年の平均ROEは約4%にとどまったので、アクティビストの株主提案に賛成した機関投資家が多かったのかもしれない。

栄研化学は英国のAsset Value Investorsの配当を株主総会で決めないとする定款を削除する株主提案が73%の賛成率で可決された。この種の株主提案は機関投資家の賛成を集めやすいと言える。

東京コスモス電機は、岩崎美樹社長の再任議案が48%の賛成率で否決された一方、シンガポールのSwiss-Asia傘下のグローバルESGストラテジーによる5人の取締役選任議案が53%の賛成率で承認された。新たに選任された取締役にはSwiss-Asiaの門田泰人CIOも含まれ、同氏は総会後に社長に就任した。同社にはSwiss-Asiaが24.4%の大量保有報告を提出していた。

太陽HDでは、オアシスによる佐藤英志社長の解任提案が賛成率49.9%とぎりぎりで否決された一方、会社提案の佐藤社長の再任議案も46.1%で否決された。同社ではオアシスの保有比率が14.9%だったが、筆頭株主らが佐藤社長の再任に反対したとみられる。しかし、佐藤社長は取締役を解任されて社長も降板したものの、上席専務執行役員として経営を担うという人事を発表したため、今後も大株主との対立継続が予想される。

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文=菊地正俊

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