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2025.09.10 10:30

家電に生成AIは必要か? 欧州エレクトロニクスショー「IFA」で見た次世代のトレンド

2025年のIFAはAI機能を搭載する生活家電の話題で盛り上がった

2025年は、サムスンのフラッグシップ「QLED」シリーズのテレビが生成AIエージェントを搭載した。独自のAIエージェントであるBixby(ビクスビー)を音声で呼び出し、視聴している動画配信コンテンツの「あらすじ」や「受賞歴」を表示したり、欧州では特に重宝されそうな12カ国言語のライブ翻訳が、サッカーなどスポーツ番組の視聴時に活用できる。この時にバックグラウンドではBixbyがグーグルのGeminiの生成AIモデルを呼び出して処理を行っているという。

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サムスンが発表した生成AIエージェントを搭載する2025年モデルのQLEDシリーズのテレビ。リモコンのボタン、または音声操作からエージェントを呼び出して番組に関する情報を聞いたり、チャットも楽しめる
サムスンが発表した生成AIエージェントを搭載する2025年モデルのQLEDシリーズのテレビ。リモコンのボタン、または音声操作からエージェントを呼び出して番組に関する情報を聞いたり、チャットも楽しめる

さらにサムスンのQLEDシリーズのスマートテレビには独自のTizen OSが搭載されている。今後アップデートにより、OSの上にテレビ向けアプリとして最適化したCopilotやPerplexityなどAIエージェントをインストールして使えるようにもなるようだ。

冷蔵庫や洗濯機などの生活家電にも、複雑な操作方法のガイドや故障に対するトラブルシューティングをAIエージェントがサポートする機能も実装を進めている。自然な話し言葉の音声操作により、「ユーザーが家電の使われていない便利な機能を見つける手段としてもAIエージェントを活用してもらえるようにしたい」と、IFAの会場でサムスンの担当者に開発の方向性を聞くことができた。

一方、LGエレクトロニクスは、昨年春にオランダのスマートホーム系スタートアップHomey(ホーミー)を傘下に収め、同年秋には家庭用AIハブ「ThinQ ON」を迅速に商品化として立ち上げた。2024年のIFAではライバルであるサムスンよりも一歩リードする形で「生成AIのあるスマートホーム」のビジョンを具体的に見せていた。

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ThinQ ONにはLGが独自に開発した「Furon(フューロン)」という、音声操作にも対応するAIエージェントがビルトインされている。今年はFuronを様々なスマート家電に投じるのだろうかと筆者は予想していたが、ブースの展示内容は昨年とほぼ変わっていなかった。ThinQ ONを司令塔として、LGのスマート家電や互換性のある他社のIoT家電を組み合わせスマートホームを実現するという、昨年のコンセプトも同じままだ。

LGの広報担当者に聞くと、ThinQ ONを中心とする同社のスマートホーム構想は、2024年の発表後に住宅・マンションデベロッパーからの引き合いが強くあったことから、B to Cよりも先にB to B向けのマーケットに最適化する方にいま注力しているのだという。入居者が「欲しい」と思うものをカスタマイズしながらスマートホームに実装して、AIエージェントがいる暮らしの価値を「今は丁寧に伝えるべき時」であるというLGの判断は筆者も的を射ていると思う。

LGがIFAの会場で見せた、さまざまなスマート家電を独自の生成AIエージェントにより操作する生活イメージ。前段にThinQ ONを中心とするAIプラットフォームを、ユーザーのニーズに合わせてマンションデベロッパ等のパートナーと一緒に作り込むプロセスが入る
LGがIFAの会場で見せた、さまざまなスマート家電を独自の生成AIエージェントにより操作する生活イメージ。前段にThinQ ONを中心とするAIプラットフォームを、ユーザーのニーズに合わせてマンションデベロッパ等のパートナーと一緒に作り込むプロセスが入る
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編集=安井克至

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