北米

2025.09.09 09:00

もし米最高裁が「トランプ関税を違法」と判断したら何が起きるのか?

Win McNamee/Getty Images

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米国最高裁判所は今週、ドナルド・トランプ大統領の「リベレーション・デー関税」の合法性を審理するかどうかを判断する可能性がある。判事らの決定は極めて重大な意味を持つ可能性があり、関税を無効とする判断が下されれば、他国との貿易関係が混乱し、企業や消費者がすでに支払った税金を取り戻すことを可能にする恐れもある。

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トランプ政権は最高裁に対し、関税をめぐる訴訟を審理するかどうかを米国時間9月10日までに判断するよう求めている。これは連邦控訴裁判所が、大統領がほぼすべての外国からの輸入品に課した包括的な関税は違法であり、トランプがその権限を超えて行動したと判断したことを受けての動きだ。

連邦巡回区控訴裁判所と国際貿易裁判所はともに、リベレーション・デー関税を違法と判断した。両裁判所は、トランプが関税を正当化するために利用した国際緊急経済権限法(IEEPA)は、そもそも関税を課す権限を大統領に与えておらず、ましてやこれほど広範な関税を正当化するものではないと指摘している。

スコット・ベッセント財務長官は、この法廷闘争とその解決の遅延が政府と経済にとって「壊滅的」になり得ると警告しており、トランプも2日に「最高裁が間違った決定をすれば、我が国にとっての破滅となる」と発言した。

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最高裁が関税を違法と判断すれば、すでに数十億ドル規模の歳入をもたらしているトランプ政権の主要な収入源のひとつが失われる。また、関税を貿易交渉や外交政策の交渉材料として用いてきたホワイトハウスの対外交渉にも影響する可能性がある。

しかし同時に、判決が企業にとって大きな利益となる可能性もある。将来の関税支払いが不要になるだけでなく、すでに支払った税金を取り戻せる可能性もあるからだ。

リベレーション・デー関税が違法とされれば、企業が払い戻しを求めて政府に殺到する事態も予想され、経済全体に広範な影響を及ぼす可能性がある。

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最高裁はいつ判断を下すのか

トランプ政権は最高裁に対し、関税訴訟を審理するかどうかを9月10日までに判断するよう求めている。また、もし最高裁が審理を行うのであれば、口頭弁論を11月までに予定するよう政府は要請している。最高裁が訴訟を受理しなければ、関税を違法とした連邦巡回区控訴裁判所の判断が効力を持ち、政権による関税施行は禁止される。もし受理すれば、年末までに関税の合法性について判決が出る可能性があるが、迅速に審理をしなければ、合法かどうかの判断は2026年6月の会期終了までのどこかにもつれ込む可能性もある。

関税が違法とされても一部は残るのか

最高裁が審理するのは、特にトランプが4月に発表したリベレーション・デー関税、または「相互関税」と呼ばれるものだ。これらはほぼすべての外国からの輸入品に適用される一般的な税率で、国ごとに設定されている。トランプはまた、メキシコ、カナダ、中国に対する関税についてもIEEPAをもとに正当化した。これは、これらの国がフェンタニル流入を阻止できていないと主張したためである。そのため、IEEPAの下で大統領が関税を課す権限を否定する判決が出れば、それらの関税も影響を受ける。一方、自動車や鉄鋼・アルミニウムなど、特定産業や品目に課した別の関税は、異なる連邦法に基づくため今回の訴訟の対象外である。

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翻訳=江津拓哉

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