忙しく働いているように見えるが、実際には意味のある結果を出していない「クロックボッチング」と呼ばれる職場の新しいトレンドが台頭している。病気でも出社して本来のパフォーマンスが発揮できないプレゼンティーイズムとは異なり、クロックボッチングは社員が細々としたタスクを午前中で終わらせずに午後いっぱいかけてやったり、スケジュールは目一杯だが仕事に対する意欲がなかったりといったものだ。この傾向は従業員の業績と生産性を低下させ、会社の収益を悪化させている。しかし、なぜクロックボッチングがトレンドになっているのだろうか。また、企業はそれに対して何ができるのだろうか。
クロックボッチングが職場で広まっているわけ
人工知能(AI)を活用した生産性ソフトウェアNotta.aiの最高経営責任者(CEO)で、職場の生産性の専門家であるライアン・チャンはクロックボッチングについて「従業員が燃え尽きていたり幻滅していたり、あるいは気持ちが離れていたりと、物理的にはその場にいるが感情が伴っていない場合に起こる」と説明する。「怠慢というよりは、士気の低下や、成果よりも存在することが重視される職場の風潮によって引き起こされる静かな引きこもりだ」。
チャンはクロックボッチングを認知的過負荷の症状、つまり終わりのない労働や週6日・朝9時から夜9時までの「996」勤務のような負荷が大きく非効率的な職場で生き残るための反応だと説明する。「従業員が明確な次のステップがないまま次から次へと会議をこなしたり、何の結果も生まない情報に何時間も費やしたりすると、無駄な努力から身を守るために脳がシャットダウンし始める」とチャンは言う。
やがて優秀な業績を上げている従業員でさえ、自分の貢献が響かないことを知っているため、出社はしていても身が入らないというように、やる気を失っていくとチャンは話す。そして、真の解決策は監視をさらに厳しくすることではなく、そもそもやる気の喪失の原因となる摩擦を取り除くことだと主張する。
クロックボッチングは負の波及効果を生み、チーム全体にダメージを与え得るとチャンは警告する。「1人がやる気をなくすと、同僚がその穴埋めをしなければならないことが多く、部門全体でバーンアウト(燃え尽き症候群)の増加や締め切りの遅れ、仕事の質の低下につながる可能性がある」。



