ヘルスケア

2025.09.09 13:00

自宅や車内で呼吸するだけでマイクロプラスチックが肺に侵入 仏研究

Peter Dazeley/Getty Images

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プラスチックの時代に生きる私たちは、マイクロプラスチックに絶えずさらされていることに、もはや驚くことはないかもしれない。しかし新たな研究によれば、家庭内や車内で吸い込むマイクロプラスチックの量は、これまで推定されていた量の100倍に達する可能性があるという。具体的に言えば、人間は自宅や車内で肉眼では見えないマイクロプラスチック粒子を1日に約6万8000個吸い込んでいるのだ。

ナディア・ヤコベンコ博士を論文の筆頭著者とする仏トゥールーズ大学の研究チームは、自宅や自家用車内から16種類の空気サンプルを採取した。研究者らは各空気サンプルに含まれるマイクロプラスチックの濃度と大きさを測定する中で、特に10マイクロメートル未満のマイクロプラスチックに着目した。これは、それ以上の大きさの微粒子や肉眼で見える粒子と比べ、肺組織の深部まで浸透しやすい性質を持つからだ。

これまでの研究から、10マイクロメートル以上の吸入粒子は上気道に集まりやすく、自動的に気道から除去されやすいことが分かっている。だが、呼吸器系は10マイクロメートル未満の微粒子状物質をろ過することができないため、こうした微粒子は肺の奥深くまで侵入することができる。したがって10マイクロメートル未満のマイクロプラスチックは、空気中を浮遊する他の環境汚染物質とともに体内に吸入された後、有毒物質を心血管系に運搬する恐れがある。複数の先行研究により、マイクロプラスチックが体内の正常な内分泌機能を乱し、がんをはじめとするさまざまな疾患のリスクを高める恐れがあることが示されている。

米科学誌プロスワンに掲載された最新の論文では、以下のように説明されている。「マイクロプラスチックは、1950年以降の人類によるプラスチック材料の広範な使用とプラスチック廃棄物の不適切な管理に起因する汚染物質だ。マイクロプラスチックとは、1マイクロメートル~5ミリメートルの大きさのプラスチック粒子を指し、さまざまな形状やポリマー組成で存在する。1~10マイクロメートルの微細な粒子状マイクロプラスチックを人間が吸入すると、肺組織の深部に到達し、組織の損傷や炎症のほか、関連疾患を引き起こす要因となり得る」

「直近の10年間で、マイクロプラスチックは屋外の大気エアロゾル(訳注:大気中に浮遊しているすべての微小な粒子)や堆積物から検出されており、その分布域は都市部や高度に工業化された地域から遠隔の山岳地帯、海洋境界層、さらには屋内環境に至るまで、世界のさまざまな地域に及んでいる。大気中にマイクロプラスチックが含まれていることで、屋内外の空気からどの程度のマイクロプラスチックを吸入しているのかという懸念を引き起こしている。特に屋内の空気は、吸入によるマイクロプラスチックへの暴露において最も大きな役割を果たしている可能性が高い。最近の研究から、屋内の空気中に浮遊するマイクロプラスチック濃度は屋外より8倍高く、屋内に堆積したマイクロプラスチック粒子の濃度は屋外より30倍高いことが示された。先進国の人々は1日の約90%を屋内で過ごし、うち5%は車内で過ごしていることから、屋内環境で吸入するマイクロプラスチックの量が著しく多いと考えられ、注意を要する」

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翻訳・編集=安藤清香

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