音楽を聴きながら回復を待つグループでも、全員が同じ楽曲を聴いたわけではなかった。そして、聴いた音楽の種類によって回復の速度に影響があった。
楽しい曲や穏やかな曲を聴いた人は、乗り物酔いからの回復が早かった。一方、悲しい曲を聴いた人は、全く音楽を聴かなかった人よりも回復が遅かった。乗り物酔いをしたときに悲しい音楽を聴くのは、どうやら最悪の選択肢のようだ。
主任研究者の岳启宗(ユエ・チーゾン)博士は「乗り物酔いになってしまったら、陽気な音楽や優しい曲を聴くことで症状を和らげられるという研究結果だ」と説明している。一方で、今回の研究は非常に小規模なものであり、まだ解明されていない点が多くあることも認めている。
しかし、音楽鑑賞がもたらす生理学的効果を指摘する最新研究は、これだけではない。
音楽が血圧に与える影響
英ロンドン大学キングス・カレッジの研究チームは欧州心臓病学会年次総会で、特定の音楽パターン(音符やリズム、メロディーの繰り返しが生む音の連なり)に、血圧をより効果的に下げる効果があると報告した。
音楽においては、予測可能なパターンが聴く人の楽しさをそそる効果を生む。聴き手は脳が予期した和音や旋律を聴くことで満足感を得るのだ。この研究では、こうした予測可能な規則性を持つ音楽が、予想外のパターンを示す音楽と比べて、血圧を低下させやすいことがわかった。
年次総会の記者発表では血圧に最も大きく影響した楽曲として、フランツ・リスト編曲のシューベルト『セレナーデ』を英ピアニストのハロルド・バウアーが演奏した音源を挙げている。
ただ、バウアーの演奏やリストの編曲、シューベルトの作曲した音楽が、他の音楽よりとりわけ優れた効果を持つと考えるべきではない。こうした考え方は、いわゆる「モーツァルト効果」と同様の問題を引き起こしかねないからだ。


