春の桜とならんで、秋の紅葉は日本にとって重要な観光資源であり、生態系が人類にもたらす「文化サービス」とも言われている。しかし、温暖化によって紅葉にも影響が現れている。冬が短く木々の新葉が早く開くようになると、紅葉の色が薄くなるというのだ。
国立環境研究所、森林総合研究所、信州大学らによる研究チームは、大雪山旭岳、北アルプス室堂、中央アルプス極楽平の3カ所の高山帯定点カメラ画像や気象観測データを用いて、紅葉の色づきと要因について解析を行った。そこで判明したのは、温暖化により高山帯の融雪時期が早まるほど、紅葉の赤みが減るということだ。
研究チームは、日別の気温と降水量から積雪量を予測し、そこから融雪日を予測。さらに温暖化シナリオや気候予測シナリオなどをもとに将来の広域融雪日予測も行った。紅葉の色づきはシナリオごとに大きく変化するが、とくにもっとも温暖化が進んだシナリオでは、色づきは大きく減少した。
土壌などの要因も無視できないが、研究チームは春に葉が開いてから散るまでの「葉寿命」に着目している。葉は春に開いてから緑色と黄色の色素が合成され、秋には緑が分解し赤が合成されて紅葉となる。ところが、冬が短く葉が早く開いた場合、秋までが長いため葉は年老いて、元気に色の合成が行えなくなるというのだ。
温暖化が顕著な予測シナリオでは、2081年から2100年には紅葉の色は色指標値VARIにして約15パーセント減少するとしている。15パーセント減少すると、今のクッキリと鮮やかな赤から、ちょっとぼやけた感じになってしまう。
最近は紅葉の色が薄いと感じている人はすでに多いだろう。どんなに自然環境を保護しても、温暖化ばかりは今すぐどうにかなるものではない。美しい紅葉はますます貴重なものとなるだろう。今のうちにしっかり眺めておきたい。



