資産運用

2025.09.10 15:30

安定パフォーマンスの「One割安日本株ファンド」。株価を動かすカタリストの発掘法とは

安西慎吾|アセットマネジメントOne国内株式担当ファンドマネジャー

安西慎吾|アセットマネジメントOne国内株式担当ファンドマネジャー

2025年の主要投信アワードで受賞多数の「One割安日本株ファンド」。マクロとミクロの積み重ねによる選球眼が、中長期的な高パフォーマンスを創出している。

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2025年4月7日は市場関係者がざわついた一日になった。トランプ政権が打ち出した相互関税の影響で企業業績が悪化することを懸念し、日経平均株価が過去3番目に大きな下落幅となったのだ。乱高下が続く数日、「One割安日本株ファンド」ファンドマネジャーの安西慎吾も小さな葛藤に揺れていた。

「関税が上がると外需系の製造業は業績面で厳しいので、自動車株や機械株を売って、内需系で食品などのディフェンシブ株を買いたい衝動にかられました。ただ、そうすると相場が戻ったときに股裂き状態になってしまう」

このとき安西の頭に浮かんだのは過去の暴落相場だった。

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「社会人になりたてのころに金融危機があり、その後もITバブル崩壊、リーマンショック、コロナショックと幾度も急落を経験しました。どのショックも下げた要因がわかり、それが緩和していくなかで戻っていった。急落時に慌てて一緒に売ると大失敗します。そうした過去の経験があったので、今回も冷静になれた。組み込んだ銘柄はたいして動かさなかったですね」

相互関税の行方はまだ不透明だ。ただ、トランプ大統領の発言に振り回される傾向は弱まり、6月30日に日経平均株価は4万円台に回復した。過去の経験は今回も生きたわけだ。

安西がファンドマネジャーを務める「One割安日本株ファンド」は、国内バリュー株で運用するアクティブ型。配当利回りやPBR、PERといった株価指標が割安な企業のなかから、業績が改善・拡大する銘柄を見極めて投資する。

鍵になるのは、株価上昇のきっかけとなるカタリスト(材料)だ。たとえ割安でも、カタリストがなければ割安の状態が続いてしまう。割安かどうかは各種データから分析できるが、カタリストの有無は情報収集力がものをいう。同ファンドが5年騰落率156.33%(2025年5月30日時点)の高パフォーマンスをあげているのも、カタリストを的確につかんでいるからだろう。

年300社以上の企業を取材

同ファンドでは17人のセクターアナリストが安西をサポートしている。朝7時半から始まるWeb会議でアナリストたちから「昨夜海外でこんな報道があった」

「半導体企業の決算がこうだった」と、カタリストになりうる情報が続々と報告される。これは大所帯の運用会社であるアセットマネジメントOneの強みのひとつだ。加えて注目したいのは、安西自身の取材力である。

「情報の少ない中小型株については、自分で企業のマネジメントと面談して話を聞いています。去年は年間300社、一昨年は400社行ったかな。不採算事業をどうテコ入れするのか、テコ入れしないなら撤退するのか。新製品の開発状況はどうか。自社株買などの株主還元に対するスタンスに変化はないか。これらのミクロ要因についてディスカッションしています」

次ページ > 縦横無尽に情報を分析してバリュー株を見極める

文=村上 敬 写真=ヤン・ブース

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