リーダーにとってジョブハギングが意味するもの
こうしたトレンドは、リーダーにとっての警告だ。自社の従業員が、ジョブハギングとして今の仕事にしがみついているのならそれは、彼らが未来に対して自信がもてないということだ。意欲はわかないものの、黙って何も言わずにいる従業員もいる。また、成長したいけれど前進できる安全な道が見つからない、という従業員も中にはいるだろう。
ここで重要な役目を果たすのがリーダーだ。なぜなら、従業員がただ定着しているだけでは不十分だからだ。従業員がただ単に、行き詰まりを感じているという理由だけで会社にとどまっているならば、組織は価値を得ることはできない。リーダーは、従業員が恐怖心だけではなく、エネルギーや好奇心をもってその会社にとどまりたいと思える要素は何なのか、問いかけなければならない。
心理的に安全な雰囲気をつくり出し、スキル開発を奨励し、目に見えるかたちで昇進の機会を示そう。そうすれば、恐怖に駆られて仕事にしがみつくのではなく、目的を持った選択として働き続けてもらえるようになる。安定を失わずに模索し、成長することができると感じられれば、従業員が積極的に仕事に取り組む可能性はずっと高くなる。
従業員にとってのジョブハギングの意味
自分は仕事にしがみついていると思ったとしても、自分を責めてはいけない。時には、安定が何よりも必要なことがある。大事なのは目的を伴った安定なのか、それとも停滞を伴った安定なのかを確認することだ。
スキルを身に着けたり、不安定な市場の時期を乗り切ったりするために、今の仕事にとどまろうと決めたのであれば、それは賢い選択だ。一方で、恐怖心に駆られ、何もしない方が安全だと考えて今の仕事にとどまっている、と気づく人もいるだろう。こうした場合のジョブハギングは、もはや何の役にも立たず、かえってキャリアにとって不利になり始めるケースと言える。
今の仕事にとどまるか、手放すか。これは完全に個人の問題だ。大事なのは恐怖心に判断をゆだねず、意識的に決断を下すことだ。
ジョブハギングと自己認識
ジョブハギングは働き手が、先の見えない現代の職場を何とか乗り切っていこうとしていることを示す現象だ。それは、自分を守るための生存戦略かもしれないが、好奇心やエンゲージメント、イノベーションを阻む「現状維持の罠」にはまっている場合もある。
カギとなるのは自己認識だ。厳しい質問を自分に投げかけよう。正当な理由があって今の会社にとどまっているのであれば、ジョブハギングによって、激動の時代を安定して乗り越えていける可能性がある。一方、恐怖心に駆られて身動きできずにいるのであれば、見知らぬ世界に一歩を踏み出し、これまで避けてきた成長を見いだすべき時かもしれない。


