ジョブハギングが合理的である場合
現在の仕事にしがみつく方が、生き抜くための賢い戦術だという場合はある。
不安定な業界で働いている場合は、安定した仕事にとどまる方が理にかなっている。勤務先が、従業員の家族向け福利厚生を提供している場合は、市場が落ち着くまで今の会社にとどまる価値があるかもしれない。
また、今の職場で働いていれば、この先使えそうなスキルを学べる機会があるという場合、現職にとどまるのは生き残りのためだけではなく、キャリア戦略と言える。
こうしたケースであれば、ジョブハギングは計算した上での一時停止と言えるだろう。次に向けて準備を整えるあいだの待機期間というわけだ。
ジョブハギングが「現状維持の罠」になる場合
ジョブハギングには、懸念すべき側面もある。ただ単に恐怖に駆られて現在の職にとどまっていると、現状を維持しようとする思考に陥って、身動きが取れなくなる可能性があるのだ。
毎朝目が覚めるたびに、「今日もまた仕事か」と気が重くなるものの、未知の職場と比べればまだマシだと自分に言い聞かせていると、心が徐々に閉ざされ、成長がストップし、やる気も失われていく。そうなったら、もはや努力を止めているので、時間とともにスキルが衰えていく可能性がある。
企業側もまた、代償を払わされる。不適切な理由で仕事にしがみついている従業員は、得てして仕事にエネルギーを向けず、創造性を発揮することもあまりない。
経営者は、従業員の定着率が高いのは自社がうまくいっている証しだ、と考えるかもしれない。しかし、辞めずに働いている従業員に意欲が欠けているとしたら、イノベーションは起きにくく、コラボレーションも難しくなる。恐怖心のために仕事にしがみついている労働者は、業務はこなすだろうが、画期的な成果を上げることはないだろう。
ジョブハギングが正しい選択かどうかを判断するには
問題は、自分が賢明な理由で現在の仕事を続けているのか、それとも単に行き詰っているからなのかを、どうやって見極めればいいのかということだ。
次のように自問自答するのも、一つの手だ。
・この仕事にとどまっているのは、自分が成長できるからなのか、それとも単に変化を恐れているからなのか。
・別のキャリアチャンスを探すとしたら、その可能性にワクワクするだろうか。それとも、そのプロセスに大きな不安を感じるだろうか。
・自分は、ベストを尽くして今の勤務先に貢献できているか。それとも、ただ無気力に出勤しているだけか。
・自分には、次に向けた計画があるか。それとも、他に選択肢を思いつかないから今の仕事にしがみついているのか。
こうやって自らに問いかけた結果、その答えが成長や安定、次のキャリアへの準備を指している場合には、あなたが現在の仕事を維持している理由は良いものである可能性がある。逆に、答えから不安や回避、停滞といった要素が浮かび上がってきた場合には、現状維持の罠にはまり込んでいるのかもしれない。


