北米

2025.09.09 08:00

トランプのインテルへの1.3兆円注入は「極めて危険な投資」、民主党の重鎮が非難

エリザベス・ウォーレン上院議員(Photo by Andrew Harnik/Getty Images)

エリザベス・ウォーレン上院議員(Photo by Andrew Harnik/Getty Images)

「インテルは失敗しつつある企業だ」と、米民主党のエリザベス・ウォーレン上院議員は、ハワード・ラトニック商務長官に宛てた書簡に記した。彼女は、トランプ大統領による同社への投資が、納税者の資金を無駄に燃やすことになりかねないと警告した。

トランプ大統領は先月、米政府が半導体メーカーのインテルに89億ドル(約1兆3200億円)を出資して株式を取得すると発表した。この発表は、共産主義国に見られる国家と産業の関係を想起させるもので、現代の米国ではあまり見られない異例のものだ。ウォーレン上院議員は9月4日の書簡で、大統領のこの取り組みが、米国の納税者や労働者に不利益をもたらさないよう、ラトニック商務長官に要請した。

「大統領は、何の見返りも求めずに、数十億ドルの納税者の資金をインテルに渡そうとしている。米国民はこの取引から何を得られるのか? 極めて危険な投資だ」と彼女は記していた。

今回の大統領の発表は、数週間前までホワイトハウスと対立していたインテルにとって、皮肉な逆転劇を意味する。この対立は、同社のリップ・ブー・タンCEOが中国軍とつながりのある企業に投資をしたとトランプが主張し、「彼は直ちに辞任すべきだ」とSNSに投稿したことが発端だった。タンCEOはその後ホワイトハウスを訪れ、トランプや政権幹部と面会した。すると、その日のうちにトランプはタンの「素晴らしい経歴」を称賛する投稿を載せ、さらに2週間も経たないうちにインテルに米国の資金を投じる意向を表明した。

インテルへの出資は、トランプが1月に政権に復帰して以来、全米の企業や機関の幹部と結んできた、数多くの、時に不透明な取引のひとつにすぎない。トランプは一貫して自身が「ディールの達人」だと誇示してきたが、法律事務所や大学、そして今回のような民間企業と結んだ合意は、しばしば具体性に欠け、取引とすら呼べないものもある。

トランプを長年敵視するウォーレン議員

ハーバード・ロースクールで契約法を教えていた経歴を持つウォーレン議員は、インテルとの取引について詳細な説明をラトニック商務長官に求めた。彼女は、誰がこの交渉を行ったのか、その権限は何に基づくのか、そして今回の合意がインテルの既存の公的義務にどう影響するのかを具体的に説明するよう要求した。さらに商務省に対し、納税者や労働者をインテル経営陣の強欲や不適切な経営から守るために、この取引に盛り込まれた具体的な保護策を明らかにするよう求めた。

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翻訳=上田裕資

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