ウォーレン議員は2022年にバーニー・サンダース上院議員とともに、バイデン前政権に対して、今回のトランプの投資と似た提案を行ったことがある。その提案は、バイデン大統領のCHIPS法(米国内での半導体生産を支援する法律)に基づくインテルへの政府補助金を、同社の株式持分に転換するというものだった。ただしその提案には、インテルが自社株買いを放棄することや、雇用を米国内に維持し、団体交渉協定を尊重すること、労組の結成に反対しないことが条件として盛り込まれていた。 さらにバイデン政権による補助金は、「明確な成果を伴っていた」とウォーレン議員は述べている。インテルは、この補助金の見返りに全米で1000億ドル(約14兆8000億円)超の新工場や施設への投資を約束していた。これに対してトランプ政権の取引では、CHIPS法の条件を含め、インテルに何かを義務づけている形跡がまったく見られないと彼女は主張している。
ウォーレン議員はまた、トランプ政権とインテルの取引が、単に経済的にも悪手だと述べている。「インテルは失敗しつつある企業だ」と彼女は記し、同社の株価が昨年60%も下落したことを指摘した。インテル自身もこうした課題を認めており、今回の取引がさらなる「悪影響」を引き起こしかねないことを示唆している。インテルの過去2年間の主要な市場は中国だったが、同社は米政府との関わりを理由に中国で逆風に直面してきた。米国からの直接投資は短期的に、中国政府が地方政府機関や国有企業に対し、インテルへの技術依存をやめるよう義務づける動きを加速させるのは確実だ。
インテルはまた、米政府が人権侵害を理由に制裁を科している中国企業との提携を宣伝していたことが、最近のフォーブスの調査で明るみに出ており、その件でも批判を浴びている。
トランプの長年の政敵であるウォーレン議員は、取引交渉と消費者保護の両分野で豊富な知見を持つ。彼女は2011年の消費者金融保護局(CFPB)の創設に関わったが、この機関は今年初め、トランプ政権の行政管理局(OMB)の局長によって閉鎖に追い込まれた(この局長は、議論を呼んだ保守派の政府改革計画「プロジェクト2025」の主要立案者としても知られていた)。
ウォーレン議員は、トランプが再選を果たして以来、彼の政権を「自己利益まみれで腐敗に甘い」と非難してきた。ラトニック商務長官宛ての書簡の中で彼女は、公的資金の投入は「大統領がとっているような混乱した特定利益優遇のアプローチではなく、透明かつ戦略的に行われ、適切に管理されなければならない」と主張した。


