古い犯罪歴は表示されず、機密情報を取り込む深刻な欠陥も判明
しかし、サンマテオ郡保安局でシャーロックにアクセスした一部の警官は問題を指摘している。フォーブスが入手した今年3月のメールによれば、ある幹部がC3 AIに対し「特定の容疑者に犯罪歴があることを把握しているのに、シャーロックで表示されないのはなぜか」と問い合わせていた。シャーロックの根本的な狙いは、容疑者に関するデータに迅速かつ容易にアクセスできるようにすることだった。しかしC3 AIの社員は、このシステムが2012年以前に作成されたサンマテオ郡保安局の記録・事件管理システムのデータは取り込んでいないと説明した。その後、その幹部が「すべての報告書を取り込む予定はあるのか」と尋ねると、C3 AIの社員は「予定はない」と答えた。サンマテオ郡の広報責任者のスパイカーは、この問題は2012年に保安局が記録管理システムを移行したことに起因するもので、「シャーロックは現行システムとしか連携していない」と説明した。
しかし、さらに深刻なエラーも起きていた。今年初め、保安局の職員はC3 AIのソフトウェアが「制限付き案件」を取り込み、本来は限られた人物しか閲覧できない機密性の高い情報が表示されていると警告した。加えて、システムのダウンやバグでログインできない不具合も繰り返し発生した。C3 AIのグットショウは、同社は常にアプリの改善や不具合の修正に取り組んでいると述べた。
シーベルの計画は、シャーロックのモデルを他の機関にも展開することだった。しかしC3 AIは、競合に後れを取っている。同社のグットショウは、C3 AIには警察向け製品を利用している顧客が20あると主張したが、具体的な顧客名は挙げず、その数にサンマテオ郡の16の機関が含まれているのかどうかも明らかにしなかった。
競合は全米で導入を拡大
これに対し、Axonは競合製品である「Fusus」が全米で250以上の警察署に導入されていると発表している。また、Peregrineも250以上の公共安全契約を結んでいると主張しており、同社の非公開株式の評価額は25億ドル(約3680億円)に達し、現在のC3 AIの時価総額と並ぶ規模になっている。C3 AIは、Peregrineよりも8年早く設立された企業で、その事業は地方警察向けにとどまらず、幅広い分野を対象にしているにもかかわらず、この分野で優位に立てていない。
業績悪化で創業者シーベルはCEO退任、新規顧客の獲得も失敗に終わる
また、C3 AIの全体的な事業も苦戦している。同社の売上高は、2年間続いた増加の後に、直近の決算では四半期ベースで35%減少して7000万ドル(約103億円)にとどまる一方で1億2500万ドル(約184億円)の損失を計上した。シーベルはこの結果を「まったく受け入れがたい」と述べた。免疫疾患に関連する健康問題や視力の不調を抱えていた創業者のシーベルは、7月に14年間務めた同社のCEO職を退任すると発表した。ただし取締役会長としては留任する。「私は、この会社が今後、成長を加速していける体制にあると確信している」とシーベルは語っていた。
一方、フォーブスが入手したEメールの記録によると、シーベルの警察向け技術チームは、今年初めにカリフォルニア州プレイサー郡保安局に対して、自社ソフトの導入を提案していた。C3 AIのAIエンゲージメントディレクターはサンマテオ郡保安局の職員に宛てて「彼らはシャーロックと同様のアプリケーションの導入に非常に関心を持っている」と書き、デモの支援を依頼していた。
しかし、この売り込みは失敗に終わった。プレイサー郡の広報担当マネージャー、エリース・ソヴィアーはフォーブスに対し「C3 AIから接触はあったが、我々は彼らの製品を採用しないことを選んだ」と語った。


