警察向けシステム市場の競争激化、競合に後れを取るC3 AI
シャーロックは現在、複数の企業が各地の警察に売り込んでいる「リアルタイム・クライムセンター(RTCC)」と呼ばれるシステムの1つだ。この分野ではAxonやPeregrine、最近ではFlockといった公共安全テクノロジー企業が、公開記録や多様な監視データを集約してAIで解析し、情報分析官が捜査の手がかりを見つけ出すための同様のシステムを提供している。
この市場の主要プレーヤーになるための条件を備えているC3 AIにとって、シャーロックはその試金石となるはずだった。シーベルは、ビッグデータ関連で財を成したビリオネアで、2006年に顧客管理ソフト会社Siebel Systemsをオラクルに58億ドル(約8530億円)で売却していた。彼が2009年に設立したC3 AIは、政府や民間企業が膨大なデータセットから洞察を得られるAIモデルを提供する企業で、2020年の新規株式公開(IPO)で時価総額が一時100億ドル(約1.4兆円)を超えていた。
またシーベルには、110億ドル(約1.6兆円)規模の警察テクノロジー市場で大きなシェアを取れると期待できるもう1つの理由があった。それが、アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)との提携だ。2017年、シーベルはC3 AIとAWSが「世界中のすべての顧客を共同で獲得した」と語り、当時AWSのCEOを務めていたアンディ・ジャシー(現アマゾンCEO)とも緊密に連絡を取っていると豪語していた。アマゾンは2023年以降、C3 AIの警察向け製品の開発に資金を提供しており、両社は技術を統合する協定を結んでいる。
サンマテオ郡の保安局でシャーロックを担当する職員は、C3 AIに対するAWSの資金によって、「デイリーシティでのパイロット事業の60万ドル(8820万円)の費用が全額賄われた」と述べた。AWSの広報ディレクター、アイーシャ・ジョンソンは、「パートナー企業が資金をどう活用するかは各社の判断だ」と説明し、この件についての追加のコメントを控えた。
内部からも「ほとんど機能しない」との率直な評価
2023年半ばまでに、C3 AIは勢いを増していた模様で、調査会社IDCが、保安局のデータ主導型の警察活動の取り組みを表彰した際には祝賀ムードに包まれた。しかし当時の記録によれば、実際にはサンマテオ郡の警官の間でシャーロックは広く使われてはいなかった。その年、保安局の上級アナリストが他の機関の警官に送ったメールには、C3 AIの技術に関する率直な評価が記されていた。「率直に言って、我々はこの2年間C3 AIと取り組んできたが、製品はほとんど機能していない。本来の機能は果たすが、うまくはできない。大きな可能性はあるが、完成品になるまで待った方がいい」とそのアナリストは述べていた。
C3 AIのグットショウは、この発言そのものにはコメントできないとしたうえで、ツールに対する不満は「一部のユーザー」から出ているものだと示唆した。彼は、シャーロックが2023年以降「大幅に成熟した」と語り、フォーブスに対して「このシステムは進化の途上にあり、私たちは、参加しているすべての機関を支援できることを誇りに思う」と語った。また彼は、「今では多くの満足しているアナリストがこのアプリケーションを使っている」とも付け加えた。


