稼働予定14機関のうち7機関が実用性なしと回答――遅延や機能不備が顕在化
しかし、1200万ドル(約18億円)と3年を費やしたにもかかわらず、プロジェクト・シャーロックは使い勝手の問題や機能の不備、大幅な遅延に苦しんでいることが、フォーブスが入手した公文書に記載されている。導入計画のタイムラインでは14の機関が今年1月までに稼働するはずだったが、そのうち7機関はフォーブスに対し、「完全に機能する製品を使えず、捜査上のメリットも得られていない」と回答した。その7機関は、アサートン、ベルモント、イーストパロアルト、フォスターシティ、メンローパーク、サンブルーノ、サウスサンフランシスコだ。
一方、サンマテオ郡保安局は、「実際にはフォスターシティやサンブルーノの警察のほか、デイリーシティ、レッドウッドシティ、サンマテオの各警察が利用可能だ」と主張した。しかし、同局はそれらの機関で実際に警官がシャーロックを活用しているのかについては明言せず、フォスターシティのコリー・コール署長は、昨年5月31日に稼働予定だったこのプロジェクトが、「いまだ開発段階にあり、恩恵を感じていない」と語った。サンブルーノの元暫定署長スーザン・マンハイマーも、「限定的なベータ版を利用しているのみだ」と6月にフォーブスに語っていた。
メンローパーク警察のデービッド・ノリス署長は、14の機関のすべての取り組みが、当初のスケジュールから「遅れている」と語り、「テクノロジーそのものは導入済みだが、実際の運用は遅延している」と説明した。ベルモント警察でシャーロック導入を担当するクライド・ハッシー警部補も遅れを認め、「納得のいく答えを持っていればよかったのだが」と語り、その理由を説明できないと付け加えた(この記事の公開後にハッシーは、一部の職員にアクセスが付与されたと語った)。その他の機関からのコメントは得られなかった。
郡内の保安局の関係者は、シャーロックに参加している部局の間で失望感が広がっていると語り、「導入された部署でも期待外れで発展を待っている状態だ」と述べた。さらに「プロジェクトが3年経ってもまだ開発段階にあるのは信じられない」と語り、ベータ版を使っている部局でも十分な成果が得られていないと指摘した。「私が話したほぼすべての機関は、この取り組みが完了して、本当に実用的なリアルタイム情報が得られるシステムに置き換わることを望んでいる」とその人物は語った。
今回初めてその名称と詳細が明らかになったプロジェクト・シャーロックの停滞は、シリコンバレーのビリオネアであるシーベルや巨大企業アマゾンの支援があっても、警察でのAI活用が官僚的障害や技術的限界によって思うように進まない現実を示している。サンマテオ郡では、AIと大量の監視データを組み合わせて警官に迅速に重要情報を届けるという期待はいまだ実現していない。
遅延の原因で食い違う見解、保安局とC3 AIそれぞれの主張
サンマテオ郡保安局の広報責任者グレッチェン・スパイカーは、遅延について「追加の機関を導入する前に改善を図る取り組みがあったためだ」と説明した。彼女はさらに「シャーロックはいまだ進行中の作業だ」と述べて、「保安局と協力機関はC3 AIと緊密に連携し、このシステムに必要な改良を加える作業を続けている」と付け加えた。
一方、C3 AIで州・地方政府向けプロジェクトを担当するグラント・グットショウは、遅延の原因が「このような大規模な監視システムを複数の機関にまたがって導入する際に特有の官僚的課題」にあると説明した。「私たちはすべての参加機関と頻繁に会合を持っているが、郡全体での協力となると、人々が想像するような官僚的プロセスが、プロジェクトの進行をしばしば遅らせている」と彼は語った。
「成功例」はデータで示されず、具体例は1件のみ
サンマテオ郡もC3 AIも、シャーロックが地域の警察活動に大きな効果をもたらしたことを示すデータを提示できなかった。グットショウは「複数の成功例」があるとしたが、このシステムの具体的な捜査支援の事例を明らかにしなかった。
保安局が示した唯一の例は、暴行事件で巡回中の警官がC3 AIを活用したケースだった。「このシステムは、警官が重要情報にアクセスする上で大きな役割を果たし、逮捕に結びつく手がかりを得ることができた」とスパイカーは述べた。彼女はほかにも事例があると述べたが、現在進行中の捜査を妨げる恐れがあるため詳細は明かせないとした。
大規模な警察向けテクノロジーのプロジェクトは、遅延や機能不全に見舞われがちだが、AIシステムの場合は、テクノロジーに対する誤解を招く過剰なマーケティングによって「期待が膨らみすぎる場合がある」と元国務省外交保安局の刑事捜査官アーロン・ロスラーは指摘した。「この分野での成功は定量化が難しい。ソフトウェアが設定された分析目標を達成できても、当局が適切に導入しなければ失敗と見なされる」と、現在はコンサルティング会社Krollのアソシエイトマネージャーを務める彼は語った。


