米国では、暗号資産の規制枠組みを定める市場構造法案を巡り、議会での攻防が激化している。共和党主導で進む上院案に対し、民主党反対派は年金や金融安定へのリスクを警告し、暗号資産業界は「開発者保護」が不十分なら支持しないと訴える。一方、下院は独自の法案を超党派で可決しており、トランプ政権2期目の今、米国が「暗号資産の首都」を目指す動きは大きな岐路を迎えている。
米上院で暗号資産の市場構造法案を巡る論争が再燃
8月の休会が明け、再開した米上院。ここでは暗号資産をめぐる激しい論争のなか、注目すべき一致点が浮かび上がってきた。上院で検討中の市場構造法案を巡り、本来は対立するはずの二つの陣営が「修正が必要だ」という点で意見を同じくしているのだ。その二陣営とは、エリザベベス・ウォーレン上院議員(民主党、マサチューセッツ州)が率いる規制推進派と、暗号資産業界である。
上院銀行委員会の委員長を務めるティム・スコット上院議員(共和党、サウスカロライナ州)は7月に、シンシア・ルミス(共和党、ワイオミング州)、ビル・ハガティ(共和党、テネシー州)、バーニー・モレノ(共和党、オハイオ州)の各上院議員と共に、2025年版の「責任ある金融イノベーション法(RFIA)」の草案を公表した。この法案はこれまでルミスとキルステン・ギリブランド上院議員(民主党、ニューヨーク州)などによる超党派の提出だったが、今年は共和党議員のみで提出された。
民主党反対派が「金融市場崩壊の引き金」と草案を痛烈批判、年金や金融安定に懸念
この対立の背景には、ウォーレン議員と暗号資産業界の根深い関係がある。バイデン政権が終わり、多くの業界関係者は彼女の「反暗号資産陣営」に勝利したと宣言していた。しかし、上院の重鎮である彼女は依然として強い影響力を持ち、銀行委員会の筆頭理事という立場は揺らいでいない。8月19日には、ウォーレン議員の指揮下にある上院銀行委員会の民主党スタッフが、現行のRFIA草案を強く批判する2ページの説明資料を公表した。
資料にはこう記されていた。「共和党の暗号資産市場構造法案は、米国人の退職金を脅かし、金融市場崩壊の可能性を高める。さらに違法な金融のリスクや大統領の腐敗に対応できず、投資家を無防備にする」。これに対しスコット議員は同日、「ワイオミング・ブロックチェーン・シンポジウム2025」で演説。少なくとも12人、最大で18人の民主党上院議員が法案に前向きだとし、ウォーレン議員の反対があっても法案は可決可能だとの見方を示した。
コインベースなど115社、「開発者保護なしでは支持できない」と連合書簡
ウォーレン議員の反発は予想の範囲内だったが、意外だったのは、分散型金融(DeFi)を擁護する首都ワシントンの非営利団体DeFi Education Fund(DEF)が先日、アンドリーセン・ホロウィッツ(a16z)、コインベース、ユニスワップなどの大手を含む、100を超える団体の署名入りの書簡を送付したことだ。彼らはこう述べている。「私たち115の暗号資産ビルダー、投資家、提唱者は、1つの声で議会に訴える。市場構造法制には、ソフトウェア開発者とノンカストディ型サービス提供者に対する強固で全国的な保護を盛り込むべきだ。こうした保護がなければ、市場構造法案を支持することはできない」。



