暮らし

2025.09.07 18:00

日常会話の些細な「待ち時間」で恋人にどれだけ愛されているかがわかる心理学的理由

Shutterstock.com

タイミングの重要性についての脳科学からの知見

数秒の遅れは致命的ではないという人もいるかもしれない。結局のところ、常に完璧に気を配れる人などいないだろう。だが、愛着についての研究と神経科学はタイミングは取るに足りないものではないことを示唆している。人間は生まれたときから、生物学的に合図を送る性質を持っており、文化圏を問わず養育者はそれに応えようとする。

advertisement

7つの異なる文化圏にまたがる観察研究は、母親の応答性、特にその迅速さが養育の普遍的な特徴であることを示している。重要なのは、合図に応えるかどうかだけではなく「いつ」応えるかだ。

発達心理学ではずいぶん前から、泣いたり声を出したりしたときにタイムリーにきめ細かな反応が得られる乳児は、愛着スタイル(人間関係の築き方の傾向)が安定型になる可能性が高いことがわかっている。自分が発したシグナルに反応してもらえるかどうか、そして反応してもらえるなら、いつ、誰が、どのように反応するかという「レイテンシー(待ち時間)」に関する初期の教訓は、信頼性に関する青写真として神経に刻み込まれる。

大人になると、恋人がこの愛着の役割を担うようになる。恋人は私たちが慰めや安心、協働調整を求める相手となる。相手の反応が早いと、私たちの脳はそれを同調として認識する。その結果、交感神経が落ち着いてコルチゾールの分泌が減り、絆ホルモンであるオキシトシンが分泌される。そして安心する。

advertisement

しかし反応に時間がかかると、身体はそれを不確実性と読み取ることが多い。たとえ相手が最終的に反応したとしても、そのタイムラグが小さな不安をかき立てることがある。「相手は応えてくれるだろうか」「私は選別されているのだろうか」「私はこの瞬間に1人なのだろうか」 。長い待ち時間が繰り返されるとやがて神経系はまたタイムラグがあるのではないかと思うようになり、警戒心が生まれ、信頼が揺らぐ。

最も簡単な対処法

ゴットマンは恋愛関係を銀行口座のように考えるべきだと提案している。この考え方でいくと、相手に同調する迅速な反応はすべて「貯金」で、反応が遅れたり、反応しなかったりすることはすべて「機会の逸失」で、場合によっては「引き出し」となる。

たった1度の反応の遅れが関係を良くも悪くもすることはない。だが年月を経てこのような「間」の積み重ねがはっきりとしたパターンを形成する。

・一貫して反応の待ち時間を最小限に抑えるカップルは信頼と反応の良さを築く

・反応の待ち時間が頻繁に長くなるカップルは、どちらか、あるいは両方が自分の感情的なシグナルが相手にとって重要かどうか疑問に思うような、不確かな状態に陥る可能性がある

興味深いのは、多くのカップルがこのようなタイムラグが自分たちの安心感を形成していることに気づいていないことだ。気持ちの面で距離ができたのは「恋愛感情の欠如」や「コミュニケーション不足」のせいだと考えているかもしれないが、実際には気づかないうちに小休止が生じ、信頼が徐々に失われている。

次ページ > 幸いなことに、リペア・レイテンシーはどうにもならないものではない。

翻訳=溝口慈子

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事