新規事業

2025.12.09 14:15

カウンターに双眼鏡━━カフェx絶景、岐阜の喫茶店文化革命

Uターン就職からロースターカフェ開業までの歩み

岩田さんは高校卒業後、郡上八幡を出て大学に進学。故郷を出て環境を一新し、好きだったスケボーに明け暮れたという。その頃、岩田さんの父も新たな人生を切り開くことに。

advertisement

「父親が脱サラをして、郡上で自家焙煎珈琲の喫茶店を始めたんです。東海地方ではモーニングの文化があって喫茶店が重要。お客さんもついていて上手くいっていました」

東京で10年間を過ごした岩田さんは、Uターンをして郡上へ帰郷。地元企業に就職した後、キャリアチェンジを考えて父の喫茶店を手伝うことに決めた。

「それからコーヒーについて自分で調べていくうちに、スペシャルティコーヒーのことを知ったんです。初めて飲んだのが、エチオピアのイルガチェフェ。自分なりに焙煎して飲んだものでしたが、衝撃を受けたんです。コーヒーそのものが主役になれるような、たくさんの可能性を感じるコーヒーでした」

advertisement

衝撃冷めやらぬまま、コーヒーのリサーチに没頭。東京に出向いて飲み比べをするなど、知識や経験をどんどん深めていった。

「スペシャルティコーヒーを知って焙煎するようになると、父親の店で出すコーヒーと自分が出したいコーヒーとの間にズレを感じるようになりました。父親が体力的に店を続けられるかどうかという話が出たときも、店を継ぐイメージが自分の中にはなくて。かといって父親の店を僕がガラッと変えてしまうのも……。それなら新しい場所を探して、自分で店を作った方がいいという気持ちが強くなってきました」

葛藤しつつひと区切りをつけ、2020年12月に誕生させたのがsupple coffee roastersだ。メインメニューはもちろん、スペシャルティコーヒーのイルガチェフェ。

「僕はどちらかというと、ちょっと甘さがあるチョコレートみたいな雰囲気のコーヒーが好きです。エチオピアのコーヒーに多い、ベリー系の甘さですね。樽の中に果肉を取り除いたコーヒーチェリーを入れて、酸素を全部取って無酸素状態にして発酵させます。ワイン作りでもあるみたいなんですけど、アナエロビックという方法の嫌気性発酵です。この方法で香りをつけると、抽出しているときに蜂蜜やブルーベリージャムのような甘い香りがするようになります」

アナエロビックはコスタリカで生まれたコーヒー生豆の精製方法。実はこのプロセスはまだ歴史が浅い。

「コスタリカのエル・ディアマンテというコーヒーを作っている、エステバンという若い男性が始めたプロセスなんです。2014年や2015年くらいからバリスタの世界大会などで使われるようになって、『なんだ!これは』と世界的に盛り上がりました。今ではこのプロセスがいろいろなところで使われています」

郡上を訪れたらsupple coffee roastersでコーヒーを飲もう。そんな風に考える人が増えつつあるのは、絶景もさることながら、岩田さんが淹れるコーヒーが格別だからに違いない。

次ページ > 人が人を呼び、集まった力が街を元気に

トラストバンク地域創生ラボ

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事