仮にIAIがバイカルを押さえて日本からの受注に成功したとしても、アジア諸国へのドローン輸出数を全体として見れば、なおトルコが明らかにリードしている。
ただ、イスラエルもこれまでアジア向けのドローン販売で一定の成功を収めており、なかでも監視・偵察用機で実績がある。
たとえばタイ海軍は近年、イスラエル製の長時間滞空型ドローン「ヘルメス450」と「ヘルメス900」を取得している。製造元のエルビット・システムズはヘルメス900について、タイ海軍による「外洋・沿岸両任務の遂行、広大な海域や長大な海岸線の支配、作戦艦艇との通信、民生任務の実施を可能にする」と説明している。
タイ政府はこのほか、イスラエルのエアロノーティクス・ディフェンス・システムズが手がける軽量の偵察ドローン「オービター」や大型の偵察ドローン「ドミネーター」も2010年代後半に購入している。
フィリピンも2020年に、空軍向けにヘルメス900を3機、ヘルメス450を1機イスラエルから受領した。ただ、ヘルメス900の1機は2年後に事故で失っている。また、シンガポールもヘロンやヘルメス450を運用している。
一方のトルコは、イスラエルと国交を持たないマレーシアやインドネシアに対して、ドローンを含む兵器の販売を拡大している。
マレーシアは最近、国営トルコ航空宇宙産業(TAI)に大型の多用途ドローン「アンカ-S」を3機発注した。タイやフィリピンが運用しているイスラエル製ドローンと同様に、主に排他的経済水域(EEZ)での監視活動に使うことを想定している。3機とも2025年9月から11月の間に引き渡される予定だ。
インドネシアも2020年以降、トルコからTB2とアンカをそれぞれ少なくとも12機購入している。とはいえ、両国間のドローンの取引で最も重要なものは、2025年2月にバイカルとインドネシアのリパブリコープ社との間で締結された共同生産協定に違いない。この画期的な契約に基づいて、インドネシアはTB3をなんと60機も調達するほか、バイカルの高度な多用途・高高度長時間滞空型ドローン「アクンジュ」を9機取得することになっている。


